熱 ページ43
…どうにかして私達の絆を壊したいって言うのか。
前頭葉の痛みは増して、俄に吐き気がする。
『初日は簡単に言いましたが、詳しく申しますと…
推理に失敗した回数が1番多かったチームが軽い罰ゲーム、裏切っているのがバレた回数が1番多かったチームがきつい罰ゲームになります!
1回失敗しても取り返す希望がありますね! 』
サイコの声が途切れるとともに、頭がぎゅっと締め付けられるような感覚がした。思わずその場にしゃがみ込み、瞼の裏を見るように目を閉じた。
「Aさん、大丈夫?」
「伍島…! 」
弐筱君と七瀬の声だ。何度か自分を励まして、なんとか立ち上がった。
「大丈夫、ちょっと目眩がした…」
『それでは、朝食を用意するので一旦自室に戻ってください! 』
しかし、つんざく声が、無情に私の意識を引き裂いた。
「………っ」
俄に味噌汁の匂いがする部屋で、すっきりと目を覚ました。眼前のミニテーブルには、白米、味噌汁、野菜炒めが置かれている。
「伍島、起きたか! 」
ここは私の部屋らしく、そこで何故かチームメイトが食事をしている。見たところ約2人用ローテーブルに、3人が座ると流石に狭そうに思える。
最初に気付いたらしい七瀬が、咄嗟にこちらを見て立ち上がった。
「私より少し熱い、多分微熱」
三河さんが、一口味噌汁を飲んでそう言った。
言われてみれば、昨日より怠くて、額に触れれば少しばかり熱かった。
「俺が此処まで運んだんだけど…また何かあったら大変だって、ここで食べてたんだ」
弐筱君の説明に納得し、私は「ごゆっくり」と自分なりに微笑んだ。割と冷えた左手を額に当てるも、意識が明瞭とすることはなさそうだ。
「無理しない適度に、ちゃんと食べた方がいいぞ! 」
食欲はないけど、不思議なことに空腹ではある。私は箸を手に取り、弱々しくはあるものの野菜炒めをつまんだ。
「いただきます」
程好い味付けに、思わず次の一口を求めた。
「あのさ」
次の一口をつまんだ時、三河さんが3人の動きを止めた。
「…推理、始めておいた方が良いと思う」
息を呑むように、空間が揺らいだ。
辛い。厳しい。それでも、上手くやれば皆生き残れる。
ぐるぐる考える内に、再び気分が悪くなって来た。
「あれ、また顔赤くなって来てね?」
「全く、考え込んだでしょ…」
弐筱君は立ち上がり、母親のような雰囲気を持って近付いてきた。私の額に添えられた手は、冷たくて大きくて…少しだけ、熱が下がったように感じる。
「知恵熱じゃない?Aさんは色々考え過ぎ」
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キリカゲ(プロフ) - なっちさん» コメントありがとうございます…!お褒めの言葉を賜り光栄です。この小説に需要があったということに感激しました…尊敬だなんて勿体無いくらいです。ほぼ自己満足状態ですが、少しずつ続編の更新もしていきますので良かったら宜しくお願いします! (2020年12月28日 18時) (レス) id: 696f81e61f (このIDを非表示/違反報告)
なっち - 続編に行っているようなので読まれないことを承知で書きますが、この小説、とても好きです。私はこういう複雑な人間感情を書いた小説を面白いと感じるのですが、こんなに複雑で面白い感情の小説をかける作者様、尊敬します。これからも頑張ってください! (2020年12月28日 16時) (レス) id: 8cb8225128 (このIDを非表示/違反報告)
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