side story.「初めての給料日」 ページ36
ーーこの世界には、給料日というものは存在しない。
鬼に支配された世界で、
故に、多くの人間にとっては窮屈な世界で。
だが、そんな中
試験的にとは言えど
「先生」という職業は作られた。
「成果には、見合った報酬を」
そう、命知らずにもAが上に直談判したところ
ありえないことに、その提案を上は飲んだのだ。
ーー１５日の昼下がり、イザベラの姿は図書室にあった。
普段ならありえない。
用が無い時には視界にも入れたくない。
用があったとしても入りたくない。
心底気が合わない同僚が巣をくう図書室は、
イザベラにとって決して居心地がいいものではなかった。
『…先月頼んであった報酬(もの)が届いたみたい』
定時連絡とは別に、急に連絡があったので何かと思ったら…
はぁ、とため息をつきたくなる気持ちは理解してほしい。
『今日の夕方６時ごろ、門に届く予定よ』
Aの様子なんて見ず、
仏頂面で業務連絡を終える。
『じゃあ、伝えたから』
さあ、用も済んだことだし
みんなの居る外にでも行きましょうか
と、図書室を出ようとした時
「ほ、本当かイザベラ！！」
『！！
ちょっ、ちょっと！近づかないで！』
Aは急に大声を上げたかと思うと、
イザベラの顔をキラキラした目でじっと見つめる。
普段は絶対に自分に向けるはずのない、
好意的な視線を向けてくるAにイザベラは激しく動揺した。
心なしか、イザベラに近づいてきているようにも見える。
『か、顔を近づけないで』
「今だけ、今だけは
イザベラが神様に見えなくもなくもない…」
何かされる、という雰囲気を感じ取って
反射的にイザベラは目を瞑った。
…が、少しの淡い期待をあざ笑うかのように
「じゃ、奴らによろしく言っといて」
近づいていた体はあっさりと離れ、いつもの距離に戻っていた。
Aは呆気にとられるイザベラを気にもせず、
足早に横を通り過ぎていく。
『…何を期待したのよ、私は』
ーー後日、手に入れた報酬の一眼レフカメラは
みんなに横取りされた挙句、
レイによって元に戻せない段階まで分解されたとか、
時折、あの日のことを思い出し
顔を赤くしている人が…
いたとか、いなかったとか。
ー「初めての給料日」fin.
side story.2-1「僕の先生になった日」→←ep.35「嘘」
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名無し(プロフ) - やばい！面白すぎてやばい！一気読みして来ました！完結しているのが残念でしたが凄く良い作品でした！ (2021年6月13日 15時) (
レス) id: cfb7b828ee (このIDを非表示/違反報告)
緑豆太 - ママアアアアア (2019年4月15日 22時) (レス) id: 92e40b26df (このIDを非表示/違反報告)
羽毛ふぇると - 給料日の回のマッマめっちゃかわよい....尊き...いっぱいちゅきぃ... (2019年4月13日 2時) (レス) id: 6073aafc50 (このIDを非表示/違反報告)
左京 - めっちゃ好きです！まさか先生とは！今までにない設定なので楽しんで読めます！更新頑張ってください！ (2019年4月5日 19時) (レス) id: d703cd32c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：woof x他2人 | 作成日時：2019年4月4日 3時
