ep.30 ページ30
ーー
「もうっ！ドン、ちょっとこっち手貸して！」
「えぇー」
「ほら！早く！」
ギルダは騒ぐドンを見て、はぁ、とため息をつき
ドンの腕を掴み、今の今まで掃除をしていたこの部屋から出て行った。
……エマとレイに聞いてほしい話もあったし、今ここで話そうか。
ギルダには悪いけど、ドン、ナイス。
『それにしてもさ、』
僕が話しかければ、二人はこちらを向いた。
二人も当然、これから話す話が脱獄絡みであると察して
真剣な表情で僕の言葉を待ってくれている。
ーーこれは、杞憂に終わってくれればいい。
僕の気のせいであればいいんだ。
『なんだか、引っかからない？』
「へ？」
「……」
『ママのやり口と』
『そして、最近めっきり姿を見せなくなった』
ーーA先生のこと
僕がその名を出せば、君はあからさまに動揺した。
………………
………
ーー同時刻
薄暗い某室で、手元だけを照らすランプを片手に
愛おしそうに写真を撫でる人影が、ひとつ。
『……もう、こんなに大きくなったんだなぁ』
その写真は所々に燃えたような跡が残っており、
お世辞にも、大事に扱われていたとは思えない。
けれど、それを見る者の眼差しは
とても暖かかった。
「せんせー！どこー！？」
「一緒に遊ぼーー！」
「今ならエマたちの代わりに遊んでやらなくもないー！！」
「鬼ごっこ負けるのが怖いんだろ！おっさん！」
「出てこーーい！！」
元気にはしゃぐ子供たちの声を聞いて、渇いた笑みが溢れる。
『……ははっ
だから、おっさんはやめろって』
彼は写真をある本の隙間に挟みこみ、本棚に大切に仕舞った後
窓際に近づき、カーテンを開ける。
ーー今日は、快晴だった。
部屋のドアを勢いよく開け、
子供たちの声がする方へ、駆け足で向かっていく。
「ああっ！！やっと出てきたな！！」
「先生、おそーい！」
『ごめんごめん！
さあっ、何して遊ぼうか！』
気持ちの良い風が吹く夏空の下
その男は、晴れやかな笑顔を浮かべた。
ーー先ほどまで彼がいたその部屋では
磨かれた床が、太陽の光によって煌めいていた。
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名無し(プロフ) - やばい！面白すぎてやばい！一気読みして来ました！完結しているのが残念でしたが凄く良い作品でした！ (2021年6月13日 15時) (
レス) id: cfb7b828ee (このIDを非表示/違反報告)
緑豆太 - ママアアアアア (2019年4月15日 22時) (レス) id: 92e40b26df (このIDを非表示/違反報告)
羽毛ふぇると - 給料日の回のマッマめっちゃかわよい....尊き...いっぱいちゅきぃ... (2019年4月13日 2時) (レス) id: 6073aafc50 (このIDを非表示/違反報告)
左京 - めっちゃ好きです！まさか先生とは！今までにない設定なので楽しんで読めます！更新頑張ってください！ (2019年4月5日 19時) (レス) id: d703cd32c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：woof x他2人 | 作成日時：2019年4月4日 3時
