97(大介Side) ページ47
夜遅くとはいえ、まだまだ人通りが多い街中で、彼が何を見てそんな顔をするのか、俺は必死に涼太の視線に合わせようとその辺りを注意深く観察するが、分かるはずもない。
涼太「……りょぅへぃ？」
涼太は小さく、息を零した。
それは誰かの名前だ。
―― この名前が誰のものであるのか……
分からない程、鈍感ではなかった。
涼太は今、彼が家に残してきた恋人……
―― 亮平を見つけたのだ。
涼太「待ってくれ、りょうへいっ！」
涼太はそう叫び、脇目も振れずに走り出した。
人の波を掻き分け、酔って覚束ない足取りのまま、一心不乱に恋人の名前を呼び走る。
涼太「俺を置いて行かないでくれっ！！りょうへいっ！！」
その声は俺が今までに聞いた彼のどんな声よりも必死だった。
俺は全てを知っていた。
蓮が今、誰の家にいるのかも……
そして、涼太が一生懸命探していた亮平がどんな人物なのかも……
全部知った上で、涼太のことを好きになって、彼を家に引き留めたのだ。
なぜそんなに知っているのかって？
それは、俺と亮平がひと時を一緒に過ごした兄弟だから。
蓮は去年亡くなった俺の親戚のおばちゃんから頼まれて、うちの父親が急遽、養子に迎えた血の繋がりが多少ある弟。
そして、亮平は俺が高校生の時に父親が再婚した女の連れ子で、全く血縁関係のない弟だったのだ。
俺より年下の亮平は、初めて会った時からずっと”愛”に飢えた子だった。
俺の父親は、亮平のことを邪魔者のように扱ったし、亮平の母親も元より彼のことを愛していないように見えた。
亮平は、中学卒業と共に全寮制の高校に進学してしまい、夏休みなどの長期休みですらも家に帰ってこなくなった。
俺はずっと亮平のことが心配だった。
亮平という男は少ししか話したことのない俺でも分かる程、可愛くて綺麗で儚くて、、、
そして何よりも重度の寂しがり屋だった。
何度も、亮平の番号を見ては彼に電話を掛けようか迷ったのだが、俺は結局ビビッて何も行動に移せなかったのだ。
誰にも自分の存在を認めてもらえずに、ずっと闇の中で一人もがき続ける亮平。
俺の目には大人たちのエゴに振り回されて、小さな籠の中に入れられてしまった鳥のように不憫な子に見えた。
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雛(プロフ) - まりなさん» お返事遅くなり、申し訳ありません(汗)コメントありがとうございます！本編が終わってからになりますが、リクエスト書かせていただきます。こちらこそ、これからも末永くご愛読のほど宜しくお願い致します。 (2022年1月25日 20時) (
レス) id: 9f89b51e27 (このIDを非表示/違反報告)
まりな - 初めまして、雛さんの作品をいつも楽しみに読んでいます！リクエストなのですが、このお話の中に出てくる登場人物の過去編や未来編、だてさくメイン編も読んでみたいです！宜しければ書いてくださると嬉しいです！ (2022年1月22日 13時) (レス) id: 4c6ff4de06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雛
| 作成日時：2021年9月19日 20時
