94(大介Side) ページ44
さっきの会話をもし涼太が聞いていたら、「彼とはそんなんじゃないですよ」とさらりと言ってのけてしまいそうだったからだ。
涼太は決して俺と恋人関係になることを望むことはない。
俺はそれを誰よりも、きっと本人よりも理解していた。
涼太は自身が思っているよりも恋人との傷が深く残っており、その傷に執着している。
そして、今でも自分が一方的に恋人を置いて家を出てきたことを後悔しているように「あの子、寂しくないかな」と呟いたりする。
彼の心に開いた穴を埋めることが出来るのは、俺でも涼太でも、彼の親でも他のもっと素敵な人間でもない。
―― たった一人、彼の心に穴を開けたその人だけなのだ……。
俺は聞きたくなかった。
彼の口から否定の言葉を。
これ以上何をやっても無駄だと証明されてしまうのが怖かった。
彼に軽蔑されるくらいなら、このまま友人として死ぬまで傍に居る方がいい。
俺が涼太の問いにどう誤魔化そうかと悩んでいると、マスターがさらりと嘘を付く。
「佐久間さんがあまりにもモテそうな方なので、会社での評判をお聞きしていたんです。」
マスターの嘘は辻褄こそは合っていなかったが、聞き間違いも加味すれば十分誤魔化せそうな、無理のない嘘だった。
若干涼太に渋い顔をされそうな内容ではあったが。
大介「そうそう、俺がモテて困ってますって話してたんだ。ほら、ちゃんと見てみろ、俺の顔もなかなかイケてるだろ?」
わざと己の顎を撫で、陶酔したような表情をすると、涼太はそれを信じたようだった。
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雛(プロフ) - まりなさん» お返事遅くなり、申し訳ありません(汗)コメントありがとうございます!本編が終わってからになりますが、リクエスト書かせていただきます。こちらこそ、これからも末永くご愛読のほど宜しくお願い致します。 (2022年1月25日 20時) (レス) id: 9f89b51e27 (このIDを非表示/違反報告)
まりな - 初めまして、雛さんの作品をいつも楽しみに読んでいます!リクエストなのですが、このお話の中に出てくる登場人物の過去編や未来編、だてさくメイン編も読んでみたいです!宜しければ書いてくださると嬉しいです! (2022年1月22日 13時) (レス) id: 4c6ff4de06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雛 | 作成日時:2021年9月19日 20時