32話 ページ32
とくんとゾムさんの心臓の音が聞こえる。
どれくらい抱き締められているのか、どれくらい時間が経ったのかも分からなくなる。抱きしめられている時、ゾムさんは何度も私の存在を確かめるように腕の力を強くしてきた。
そんな時、ゾムさんの衣類からピピっと小さな音が聞こえた。
ゾムさんが小さく、チッと舌打ちをして私から身体を離す。
ゾムさんは、ちょっと待っててな。と私の頭をポンポンと撫で少し離れたところでポケットから何かを出す。
「なんやねん。」
出したものを耳につけて誰かと話をしているみたいだった。
盗み聞きをしているようで少し申し訳なく感じた私は、少し離れた岩のところで腰を下ろして、先程ゾムさんに購入してもらった本を開く。
あぁ、この本のお金も後で返さないと。
そう思いながら本の文字を追っていくが、ゾムさんの匂いが私の服についているようで、少し離れたところに居るゾムさんが側にいるような感覚になってしまう。
本の内容が全く入って来ないと分かった私は静かに本を閉じた。
周りをぐるりと見渡すと穏やかな空気がゆっくりと流れるような景色だった。
川の音や鳥の声など、村の時にも聞いたことがある音だったが、私にとってはどれも新鮮に聞こえた。
腰を下ろしていた岩から立ち上がり後ろを振り返ると、ちょっとした花畑が広がっていた。
「すごく、きれい…。」
引き込まれるように花畑に足を向け進む。
花畑に着いた私は、
花を踏まないように注意しながらしゃがみこむ。
目の前にある花を見て母も花が好きだったことを思い出す。そんな母に父は私が今身につけているペンダントを渡したと聞いた。
私は、幼いながらも嬉しそうに話す母を見て、心の底から父を愛しているのだと感じた。
幼い頃の母との記憶を思い出していると、後ろから足音が聞こえて振り返る。話が終わったのだろうか、ゾムさんが近づいてきた。
私もゆっくりと立ち上がりゾムさんに向かって歩く。
ゾムさんは私の前でゆっくりと止まり、私の両手を握ってきた。
どうしたのだろう。と不思議に思いゾムさんを見つめると
「〇〇国が宣戦布告してきたそうや。急いで帰らなあかんくなった。」
穏やかだった空気がぴしりと引き締まる音がした。
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リンク(プロフ) - シケ様 感想ありがとうございます。面白いと感じて頂けて幸いです。今後ともよろしくお願いいたします。 (2019年1月12日 19時) (
レス) id: 85cd1761d7 (このIDを非表示/違反報告)
リンク(プロフ) - うぃ様 こんにちは。お褒めの言葉ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。 (2019年1月12日 19時) (レス) id: 85cd1761d7 (このIDを非表示/違反報告)
リンク(プロフ) - おじゅん様 初めまして。更新が遅くなってしまい申し訳ございません。たくさんの嬉しいお言葉ありがとうございます。これからも変則的ではありますが更新してまいります。どうぞよろしくお願い致します。 (2019年1月12日 19時) (レス) id: 85cd1761d7 (このIDを非表示/違反報告)
シケ - ちょー面白いです！続き待っております(｡･ω･｡) (2018年10月14日 17時) (レス) id: cfbdc17c2a (このIDを非表示/違反報告)
うぃ - ちわぁっす！おもしろいですね！続き待ってます！ (2018年8月31日 19時) (レス) id: de93f0d8c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リンク | 作成日時：2018年6月18日 16時
