16話 ページ16
ゾムさんと生活が始まって3日ほど経過した。
ある日ゾムさんから工具を貸してほしいと言われ、父が使っていた物を彼に渡す。
ありがと。と、お礼と一緒にもはや彼の中で癖になっているのか私の頭をポンポンと軽く撫でた。
今日のご飯はどうしようかな。と考えながら商店街を歩いていると
普段なら穏やかな声で賑わう商店街で悲鳴が上がった。
悲鳴の先に目を向けると、血まみれになったまだ小さい男の子が倒れていた。
身体が動き、男の子に近寄る。男の子のそばにしゃがみこみ呼吸の音などを確かめる。
どうすればいい。ゾムさんの時は魔法をすぐに使える環境にいた。
でも今はたくさんの人が見えている。もし魔女だとばれたら？
震えが止まらない手でどうすればいいのかわからなくなる。村の人たちの声も聞こえなくなる。
じわっと涙が浮かんできた。私が泣いたって何にもならないのに。
その時だった。私の背後から私と同じ匂いの洗剤と、彼の匂いが混じった匂いがした。
「落ち着け。大丈夫やから。医者なら俺が呼んでる。」
ぽたりと目に張っていた涙の膜が割れ水滴になって地面に落ちた。
不思議なくらい安心して、心が落ち着いてきた。
そうだ、魔法が使えなくても薬がある。私は薬師だ。
頭の中がクリアになり、ゾムさんに必要な薬を持ってきてもらうようにお願いする。
にぃっと笑った彼は、了解。と言って私の目の前から姿を消した。
あの後、ある程度の怪我を治療した私のもとにお医者さんが来てくれた。
「よくやったね。」と優しい声で言ってくれたお医者さんはその場で出来る治療をして
自身の診療所に運んでくれないかと。周りに声をかけた。
「俺が運ぶわ。」
ゾムさんが手をあげ、男の子の身体をそっと持ち上げた。
そして私のほうを向き、空いている右手で私の左手を掴んだ。
「じいさん、こいつも必要やろ？」
お医者さんの「あぁ。」という声を確認して、私に行くぞと前を歩いたゾムさんの背中を見ながら自分の左手を見て、また少し泣いてしまった。
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リンク(プロフ) - シケ様 感想ありがとうございます。面白いと感じて頂けて幸いです。今後ともよろしくお願いいたします。 (2019年1月12日 19時) (
レス) id: 85cd1761d7 (このIDを非表示/違反報告)
リンク(プロフ) - うぃ様 こんにちは。お褒めの言葉ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。 (2019年1月12日 19時) (レス) id: 85cd1761d7 (このIDを非表示/違反報告)
リンク(プロフ) - おじゅん様 初めまして。更新が遅くなってしまい申し訳ございません。たくさんの嬉しいお言葉ありがとうございます。これからも変則的ではありますが更新してまいります。どうぞよろしくお願い致します。 (2019年1月12日 19時) (レス) id: 85cd1761d7 (このIDを非表示/違反報告)
シケ - ちょー面白いです！続き待っております(｡･ω･｡) (2018年10月14日 17時) (レス) id: cfbdc17c2a (このIDを非表示/違反報告)
うぃ - ちわぁっす！おもしろいですね！続き待ってます！ (2018年8月31日 19時) (レス) id: de93f0d8c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リンク | 作成日時：2018年6月18日 16時
