赤のだるまと桃のさくら

#９ ページ10

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「…、ふぅ」





通話ボタンを押す指が少し震えている。





出ないかもしれない不安と


何を話すか考えられていない不安が交差する。





回線が悪い、と理由をつけて配信を辞めたため


今私の画面にはカワセくんとありちゃんが映っている。






「…押しちゃえっ」






discord特有の呼出音が耳元で小さく鳴る。



結構な時間が経っても出る気配がない。







諦めるか、と耳から話した瞬間に音が鳴った。








だるま「…ん」



「あっ、と、だるくん…？」



だるま「…え…？さくら…？」



「わ、私さくらです…」







今まで聞いたことないだるくんの声色に


体内の温度が急激に上がり、熱くなるのを感じた。






甘くとろけるような声は


聞いた人全てを虜にしてしまうようで。




ありちゃん聞いてたのずるいって思っちゃってたり。








だるま「うっわまじ…？めっちゃ寝てるやん…」



「ありちゃんとカワセくんから連絡受けてかけてるの」



だるま「あー…今日遊ぶ約束してた気がするわ」







忘れてた、といつもより控えめで笑う彼。


さっきより手の震えが増した気がした。





このままずっと聞いていたいと思ってしまうのは


私のワガママだって分かってるのに。







だるま「…なぁさくら」



「はっ、はい」



だるま「んー…こんなこと気持ち悪いんかもしれんけど」



「なに…？」



だるま「…もう少しだけ、2人で話せやん？」








彼の口から紡がれていく言葉には不安が混じっていて


私からの拒絶を恐れているような感じだった。




おかしいよ、そんなの。





私は今あなたから言われた言葉が


私と同じ気持ちなんだって浮かれてるくらいなのに。







「…い、いいよ」



だるま「まじで！？…っ、よかったぁ…」








神様、今だけ見逃してください。



今だけ彼の1番近い場所に居させてください。





今日の夜またやります、と呟く。





リスナーからは心配の言葉も多かったが



次を楽しみにしている人が大勢居てくれた。






胸が少しちく、と痛む。






支えてくれるリスナーに心配をさせてしまった。



先程はなかった罪悪感が重くのしかかる。






すると、discordに通知が1つ。







『俺が頼んだし、さくらは悪くないよ』






息が一瞬出来なくなる。



ありちゃんに、今一番欲しい言葉を貰えたから。

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