Memory＊変わらぬ薄紅＊ ページ25
.
「さぁ、着きましたよ」
Aが立ち止まったのは薄紅の前。
まだここに来るようになって日が浅い頃に
一度だけ訪れたことがあるこの場所。
骸はキョロキョロと辺りを見回して、
あ、と気が付いたようにAを見上げた。
「ここ、僕らが出会った…？」
「えぇ。何も変わってませんね…あの日から」
まだ冬だったあの日から咲き誇る薄紅の花達。
森から少し距離があるため普段はあまりこないが、
どうせならと骸にも知ってほしくなった。
前世で、家族や友人と見上げた、この花を。
「この子達はサクラというんです。
薄紅色でとても美しいでしょう？」
「…はい、とても綺麗です」
サァ、と風が吹く度に舞う薄紅の花弁。
この世界に四季などないからこのサクラ達も
常に咲いているのだろうが、春も終わりがけ。
前世で毎年必ず行っていたイベントを
ふと思い出して、少し懐かしくなって。
「サクラは春に花を咲かせることで有名ですので、
どうせなら花見をしてみようかと思いまして」
「花見？」
「その名の通り花を見て楽しむイベントです。
ここなら綺麗に咲いていますからね」
現実では互いが今どこにいるか分からない上に
特定の国以外ではこの花は咲かない。
まぁ、ここでもサクラがサクラであることに
変わりはないからどちらでもいいが。
「…Aはサクラが好きなんですね」
「え？」
「何か、笑顔がいつもより穏やかです」
「おや…」
自分は全く意識していないのだが。
まぁ、骸が言うのならきっとそうなのだろう。
Aは一度サクラに視線を向けてから
骸に向き直り、ふわり、と微笑む。
「…そうだね。サクラが一番好きです。
私の“元の”故郷の花ですから」
「元の？」
「…ふふ。ほら骸、少し歩きましょう。
桜吹雪の中を進むのもまた一興、ですよ」
きょとん、とした骸の手を引いて薄紅の中を進む。
右目が骸の秘密だとしたら、記憶がAの秘密。
まぁ、記憶があるからどうということもないが…
ふと昔のことを思い出して寂しくなるのだけが問題だ。
Aはもう一度骸に向けて笑いかけると、
記憶と重なる満開のサクラを見上げて笑んだ。
.
Memory＊日本語の修得＊→←Memory＊四季それぞれの花＊
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 476人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「成り代わり」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
丸川雅也 - ヴァリアー大好きやー！特にフランとベルが好きや♪( ´▽｀)これからも頑張りやー！応援しとるで〜(=ﾟωﾟ)ﾉ (2016年2月29日 18時) (
レス) id: a88a1cf72d (このIDを非表示/違反報告)
黄色い華(プロフ) - 夢主さんの怪しい可愛さが好きです！ 更新頑張って下さい、応援しています！ (2015年2月7日 23時) (レス) id: a60929f203 (このIDを非表示/違反報告)
猫 - ベルの扱い方ェ．．．ｗｗしかもスクがボスコンｗｗｗｗｗ←(笑いすぎ注意)あ、更新待ってますー頑張ってくださーい、あのオチアンケのやつ(顔文字)みたらなぜか…なぜか笑っちゃいましたー… (2015年2月7日 15時) (レス) id: 8100f6f65c (このIDを非表示/違反報告)
にゃんこ - ベル可愛い♪♪ 続きが気になります！ (2015年2月3日 19時) (レス) id: c905f00d5e (このIDを非表示/違反報告)
みな(プロフ) - ヴァリアー、とっても好きです。なかでもスクアーロ好きです！再新がんばってください。待ってます！ (2015年2月3日 19時) (レス) id: c03c618686 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
