前世１５６ ページ15
アイツは…タトはふと言ったんだ
俺が様付けする事によって、俺の存在が遠くに感じると。
また独りになったような感覚になるんだ、と。
そんな思いをさせて本当に心苦しく感じた
守ろうとして出た行動が、結果また彼に寂しい思いをさせていた事に罪悪感を覚えた
こんなことなら従者になんかならなければ良かったとも思った
俺がそばに居ることでアイツのさみしさを紛らわせたかったのに、逆に傷口を抉っていては俺のいる意味はもはや皆無だった
けど、そんな中で隣国との親善パーティーを開こうと国王が提案
タトはあまり乗り気ではないままパーティー当日を向かえた。
いつもの如く護衛をする中、1人…同じ騎士とは思えないほど凛々しい男を見かけた
思わずガン見してしまったためか、向こうから話しかけてくれたっけな
《初めまして…リオンロイザ国、ゼイス人で騎士のリヒト=クライマリスと言います》
なんて芯の通った声質なんだろうか
ずっと聞いていたいほど、彼はとてもいい声をしていた
互いの自己紹介が済んだあと、少しだけ会話をしたが知性もあり品格もありで、まさに完璧な騎士の鏡だった
(立ち振る舞いは俺も見習わなくてはって思うほど綺麗だった)
その後何回かパーティーが開かれ、その度に俺達は少しずつ会話をして打ち解けていった。
そのパーティーをきっかけにタトにも、恋をした女性が出来たと聞いた
名前はA=リオレオン、隣国のお姫様
お姫様のわりにはとても天真爛漫のようだけど、やはり王家のものともあり品性はあった
溶け込みやすい性格をしているせいか、そう思ってしまうのだろう
実際俺も会って話した事があったが、とても気さくで明るく話しやすい性格の持ち主だと思った
夜な夜な俺の部屋にやってきてはAの話をするタトはとても可愛かった反面、少しだけ嫉妬した
俺の元からタトが居なくなってしまう気がしてならなかったからだ
(タトの幸せを願ってたのにな)
だからなのか、運命とは残酷だった。
あるパーティーでリヒトと例のお姫様が2人で会話をしていた
親密さから言って、俺やタトみたいなものかと考えたが笑い合っている姿を見てソレは確信に変わった
《あの目は……》
2人の互いを見つめる瞳はまるで愛おしい人を見守るかのような、そんな目をしていた
一瞬で2人が【恋人】であると悟った
これをタトが知ったら……
ー…なんだか嫌な予感してならなかった
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作者名：倉狩莉緒菜 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/futere/
作成日時：2018年9月17日 18時
