ダークネスチェリー (ページ5)

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「康二、落ち着いた？」

「おん…ごめんな？」

「しょうがないよ、俺だって恋人が突然死んだら同じふうになると思う」

「ありがとう…」

阿部ちゃんの優しさが心にしみて、また涙が出てきそうなのを必死で止めた。

「康二、なんかあったら言えよ？1人で抱え込みすぎないこと！」

「そうだよ！康二くん、俺はいつでも駆け付けるからね！」

「ふっかさん…ラウ…ありがとう」

みんな、俺に優しい言葉をかけてくれた。

阿部ちゃんから始まり、ふっかさん、ラウ、舘さん、しょった、さっくん、照にぃ。

この7人がいなかったら、俺は今頃…

「康二落ち着いたようだし、結構いい時間だからそろそろお開きにしようか」

「うん…そうやな。みんな、ほんまありがとう」

皆各々仕事があるから頻繁に集まれる訳では無い。
きっと次集まるのはそれこそ四十九日法要の時だろう。

みんなが帰って、またさっきのように時計の秒針の音が部屋の中を埋めつくした。

彼が死んでも時間は進んでいく。
いつまでも固執しては何も変わらない。

それでもやっぱり恋人の俺に何も言わないでいなくなったことに腹を立てた。

テレビ台に飾られた2人が写っている写真。

蓮は俺に肩組みし、俺は片手でカメラを持ち、もう一方は顔の近くでピースをして、満面の笑みで写っている。

フレームの上に少しだけ埃が溜まっていたから手で払った。

俺はなんだか溜まっていく埃に恐怖を感じた。

いつか違う誰かと笑い合う日が来て、俺の中で彼の存在が知らぬ間に小さくなってしまうかもしれないという恐怖を。

出会ってから大きくなり続けた存在が、ササッと自分の中で掃除されてしまいそうで怖くなった。

もう寝よ。

考えれば考えるほど出てくるのは涙ばかり、ネガティブな想いばかり、これも望んでないとでも言うのだろうか。

しばらくはポジティブなんかなれっこない。

どんだけ悲しくても辛くても、明日は仕事に行かなければいけない。

どんだけ彼の死を惜しんだとしても、俺は俺の人生を歩まなければいけない。

どんだけ彼を恋しく想っても、もう彼はいない。

ロボットみたいに背中にリセットボタンがあれば、蓮も自分からこの世を去ること選択しなかったんじゃないかと、勝手ながらに思う。

朝起きたら俺のリセットボタンが背中にくっついてたらいいのにな。