ナイモノネダリ＜M.Hokuto＞ (ページ10)

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大我side

大我「……A、俺のこと、そんなに好きじゃないのかも。」

俺は弱々しく呟いた。

照「……なんでそんな急に悲しいことを……」

いわもっちゃんが驚いたような顔で言う。

今、いわもっちゃん家で宅飲み中。

Aから、元カレに会いたいと言われた次の日の夜。

俺は気が付けばいわもっちゃんの家に押しかけていた。

テーブルに缶ビールを置いて、おつまみを軽くつまむ。

いわもっちゃんは、俺の相談相手。

気が合うし、仲がいい。

いわもっちゃんはソファーに腰掛けて、俺はソファーの下に敷いてあるカーペットに座る。

２人ともテレビの方向を向いて、お酒を飲み進めている。

照「てか、その彼女さんと大我になにがあったの？喧嘩？」

大我「ううん。……昨日、Aが俺にお願いしてきたの。来週の日曜日、出掛けたいって。」

照「……うん。」

大我「……誰と出掛けるのって、聞いたんだ。……そしたら、なんて言ったと思う？……高校時代に付き合ってた、元カレだってさ、」

照「……え？」

いわもっちゃんは、驚いて固まる。

俺は気にせず続ける。

大我「ビックリしちゃうよね。……その元カレと、より戻しに行くのかなって。不安になって。俺愛されてんのかなーって。よく考えたら、手は繋ぐけど恋人繋ぎはしないし、キスもあんましない。」

大我「……Aは俺のこと好きなのかな……」

そう呟くと、俺の瞳に温かいものを感じる。

頬に流れてこないように必死に耐えながら、言葉を続ける。

大我「……怖いんだよね、俺……そのうち、俺の前からいなくなっちゃうんじゃないかって……誰かと駆け落ちして、逃げていくんじゃないかって……」

そこまで言うと、いわもっちゃんが俺の肩を叩く。

照「大我、吐き出せよ。」

大我「……え、？」

照「彼女に思ってること、今ここで吐き出せ。そんで、言いたいことだけ、彼女に伝えろ。大我が自分の中だけで思ってたら、彼女には伝わらねぇよ。……だからまず、今吐き出せ。そんで、泣きたいなら泣け。」

俺はいわもっちゃんの方をゆっくり振り向く。

いわもっちゃんは、いつも通りのクシャッとした笑顔で微笑んだ。

大我「……っ、、、涙……」

照「よしよし。泣け泣け。」

俺の瞳から溢れる涙。

いわもっちゃんは、優しく俺の背中をさすり続けてくれた。

俺はその優しさに甘えて、手のひらで目元を覆いながら泣き続けた。