ナイモノネダリ＜M.Hokuto＞ (ページ5)

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Aside

仕事帰り。

お店から出ると、近くの塀に寄りかかってスマホをいじっている人を見つけた。

「……大我！！」

その人の名前を呼ぶ。

大我と呼ばれたその人は、私の声に気が付いてスマホをポケットに直し、顔を上げる。

大我「お帰り。遅かったね。」

「ごめんね。待たせて。てか、わざわざ歩いてきたの。」

大我「俺ペーパーだからさ。」

「運転しようね？」

大我「Aが免許あるからいいのー」

「も～」

私と大我は、並んで歩き出す。

月が私たち二人を照らす。

大我「今朝俺連絡したの気が付いた？」

「え？いつ？」

大我「６時半とか。」

「早すぎｗｗまだ起きてない」

大我「お仕事ある人はそんぐらいには起きてください」

「はーい」

私は大我の言葉に素直に頷いて見せる。

そして、どちらともなく手をつなぐ。

「大我、手あったかい。」

大我「俺人間カイロだからな～」

「なにそれｗｗｗ」

手をつなぐ。

…でも、恋人繋ぎはしない。

別に、なんとなく。

お互い特に理由なんかない。

大我「ね、今度俺の実家来ない？」

「え？……大我の……お父さんとお母さんに会う……ってこと？」

大我「そんなに固くならないでよｗｗ俺がAのこと話したら、ぜひ連れて来いって。」

「……私でいいの……？」

大我「そんなに不安がらなくていいよｗｗ普段通りでいいんだから。だから時間がある日教えてよ。親にも教えておきたいし。」

「……うん。まだ仕事休みとれなさそうだし、もうちょっと待ってもらってもいい？」

大我「いいよ。Aの気持ちの準備が出来次第で。」

「ありがとう。」

大我の優しい言葉に私は嬉しくなる。

大我は、私の恋人だ。

あのお店で働き始めたばかりの頃に出会い、大我とよく話すようになり大我から告白されて付き合うようになった。

大我は、優しくて一緒にいて楽しい人だった。

子供っぽくて、純粋で、天真爛漫な大我。

私はそんな大我に惹かれていった。

…でも。

大我と過ごしていく日々の中で、心のどこかに北斗がいた。

たまに、ひょっこり顔をのぞかせてあの笑顔で笑うんだ。

それがたまに、私の心を苦しめる。