Maybe. (ページ29)

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控えめに音を立てる波と、どこか悲しそうな声で鳴くかもめを防壁に座って眺めた。

潮風に吹かれた髪の毛がちょっとベタついてる。

夏場の日差しが容赦なく照りつけていてアスファルトからの照り返しも相まってか座っているだけでも汗をかいてきた。

隣に坐るそいつはそんなに汗をかいていなくて、夏に似合わない白肌が映える黒い服を風になびかせていた。

｢あ、見てよ阿部ちゃん。あの水色の水着着てる子、めっちゃ可愛い｣

｢もーう、最っ低。ホント最悪。きらーい｣

｢めちゃくちゃ言うじゃん！？｣

真剣な顔して海を眺める横顔が綺麗だねって言おうと思ったのに、その発言に少し苛立つ。

目の前にいるのは俺なのに。本当に女の子が好きだよね。

見つめていた横顔から視線をはずして、空を悠々と飛ぶかもめに焦点を当てる。

白い。綺麗。

ぐーっと手を伸ばすとさっきまで水着姿の女の子に鼻の下を伸ばしていたやつが同じように空へ手を伸ばした。

｢空、青いねぇ｣

｢何言ってんの。晴れてるんだから当たり前でしょ｣

｢マジレスかぁ。

何、拗ねちゃって｣

｢うるさい、黙って女の子見てろよ。ほら、水色の子行っちゃうけど？｣

わざとらしく語気を強くして笑いながら俺に伸ばした手を振り払った。

海に行きたい、そんな俺のお願いごとをすんなり『いいよ』と聞き入れた時に確かに珍しいと思ったんだよ。

水着のお姉さんが見たかったんだね、ふーん。男の子のロマンだもんね。

空に伸ばした手をぶらんと下げた。

元々そんなに白くない俺の腕が力なく下がって弱々しく見える。

そんな俺の腕を真っ白な腕が掴んだ。