Maybe. (ページ28)

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｢じゃあ、その｣
｢ん？何や？｣

体をパッと離して俺の顔をのぞき込む。
またすぐそこにきた康二の目から若干視線を逸らした。
あぁ、俺今絶対目泳いでるしオドオドしちゃってる。

｢えっと、康二は俺に他人と寝て欲しくないんだよね...？｣
｢そうやね！俺心配やもん、阿部ちゃんは人からの好意に気が付かなさすぎ！どこまで鈍感やねん｣

んー、と腕を組んで少し考える素振りを見せてからウンウンと頷きながらそう言う。

｢...おっけい。じゃあその、相手は康二が｣
｢いや、無いな｣

コロコロと表情を変えていた康二に真顔でキッパリと断られた。
なんだか振られた気分でシュンと気分が落ち込んだ。

｢そんな顔せんとってや」

項垂れる俺の顔をぐにぐにと捏ねてじゃれる子供のように笑った。

｢不安になって欲しくないから、ちゃんと話すね。

あんな、他の人に抱かれてたって思い出して辛くなるだけやろ？そしたら俺はまた目の前で阿部ちゃんが辛そうにしてるの見なあかんやん。俺も苦しいねん。
やから、ごめんな？阿部ちゃんのことは抱かれへん｣

｢...うん、わかった｣

｢本当！その代わり何でもするで。俺から持ちかけた話やし｣

もう一度ごめんなと言ってさっきよりも優しく俺を抱きしめた。
こんなにも俺に優しくしてくれるのはどうしてなの？なんでそんな気にかけてくれるの？
そう聞こうとしたけど無粋だと思って口を閉じた。

｢康二？｣
｢んー？なんやなんや｣
｢ふふ、ありがとうね｣

今度こそごめんね、じゃなくてありがとうと伝えた。俺がそう言うと康二は短く笑って俺の頭を撫でた。
手が優しくてあたたかくて、俺はそれだけでも数日分満たされた気がした。

この日から俺と康二の奇妙な関係が始まった。