Maybe. (ページ25)

今日:11 hit、昨日:27 hit、合計:67,808 hit

ー24ーページ25

グッと唇を突き出すような形にして涙をこらえ潤む瞳にデスクライトが反射した。

「ウソやろ？まだ好きとちゃうの？苦しそうやで。なんで気付かへんの」

俺も苦しい。そう言って涙をこらえるように口を閉ざした。

俺だって苦しいよ、気が付いてるよ。
でも、とだって、の言い訳が頭の中でグルグルしている。
一度ボロボロになった心が全然元に戻らなくて、頭の片隅にはずっと昔の記憶が残ってる。

「うん、好きだよ。でも俺が思ってるだけだよ。どっかでまた好きになって欲しいだなんて。
実際、付き合ってたかどうかなんてもうわからなくない？多分、付き合うの定義自体一致してなかったんだよ」

右側に寝転がっていた康二の方を向くと左目から右目へ水滴が流れていって枕に大きなシミを作り始める。

「また好きになって、とか言ったけど本当は俺のことそういう意味でいう好きの対象にしてくれたことなんてなかったのかも」

ふふ、っと盛れた笑いはそれはもう相当自虐的なものだったと思う。
女の子にモテモテで、いつもふわふわ何処かへ飛んでいってしまいそうなふっかを自分の元に留めておきたかった。その時のように未だにちょっと可愛こぶっちゃう自分を笑った。

「笑っちゃうよね。全部俺だけなの。どれだけ好きだったんだよって」

もう一度俺が自虐的に笑うとかけてた布団を跳ね除けながらどこか怒ったような顔をした康二が起き上がった。

「俺の前で無理して笑うの、ほんまにやめて。
俺は阿部ちゃんにもうこういうのやめてほしいねん」

なんだよそれ。俺は自分がやりたくてやってるだけなんだから放っておいてよ。
そう言おうとして勢いよく俺も起き上がったのに、出るはずの声は出なかった。

｢じゃあ...じゃあ、俺はどうやって忘れればいいの？何年経っても忘れられなかったのに今更もう無理だと思わない？他に方法なんて無かったんだよ｣

お日様の匂いがした布団のカバーを握るとみるみるうちにシワがよって真っ白なシーツに影が出来た。

本当は誰かに助けて欲しかった、ずっと。

助けて？何をどうやって？
俺はどうして欲しいの？

｢分からないよ｣

喉の奥から絞り出したその声は、あまりにも汚くて、滑稽だった。