Maybe. (ページ22)

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高校二年生。
真っ暗闇の中に落とされたような気持ちだった17歳。

負けたくない、絶対やってやる。
その一心で進路を決め始めていた。

みんなはどうしてるのかな。最近あまり話せていない。
空中分解しかけていた全員の袖を引っ張って何してるの？なんて聞けるほどの勇気は持ち合わせていなかった。
練習場の中心から離れたところで一人背中を丸めて床を見つめていた唯一声をかけられそうな人の所に足を進める。

「ふ、ふっか」

ちょっとだけ、ちょっとでいいから話せるだけで良かった。

「.....あぁ、阿部ちゃんか。どしたの」

下からジロリとジト目で見つめられギュ、っと目を瞑るとすぐに柔らかい声で名前を呼んで俺の手を引っ張った。
突然の事で固まっていた体がさらに強く固まる。

「あ、これなんて言うんだっけ」
「この丸いヤツ？たこ、じゃない？ペンだこ」
「勉強のし過ぎじゃね？」

頭をかいてぶっきらぼうにそう言うと俺の手を離してそっぽを向いてしまった。
ふっかなりの心配の仕方。

「そうかも。でも絶対結果残すから」
「ふふ、そ。頼もしいじゃんお前」

握りしめた俺の拳をまた優しく包むと自分の方に引き寄せて、その瞬間にバランスが崩れて思わずふっかの方に倒れ込む。
練習場の床に打ち付けたところが少し痛い。どうしてくれるの。

「痛....なあに？」

光が少しずつ消えていたふっかの瞳を必死に追いかけた。
こっち見て、お願い。って。

「阿部ちゃん、今日の夜空いてるよね。俺ん家おいで」

高校二年生、初夏。
俺は蝶になった。相手は俺がずっとずっと好きだった人。

この頃ふっかは、高校の女の子数人と関係を持っていたらしい。理由は知らない。
俺にとって、そんな浅い関係は俺を惑わす材料になんてなりやしないと慢心していた。