Maybe. (ページ1)

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Prologue. ページ1

「ウチらさぁ、元に戻った方が良くない？」

ヘラりといつもの様に、それこそ自己紹介をする時のような、或いは挨拶をする時のような口調でそう告げられた。

「何、急に何言ってんの？」

耳を疑うってこういうことを言うんだっけ。
ハイトーンに染められた髪が揺らぐ視界の中に映る。
嫌だ、もう何も信じられなくなっちゃいそう。
俺が居なくて寂しかったって、そう言ってくれたじゃん。

「だからぁ、元に戻ろうよ。
じゃね、早く寝な」
「なんで？理由を教えてよ。新しい好きな子が出来たの？」

ふらっと立ち上がって俺の部屋から出ていこうとするところを必死に留めようと力なく下がっていた腕を掴む。

「んー、なんかもういっかなぁって。
あ、そう意味じゃないけど俺は今もちゃんと阿部ちゃんが好きだよ」
「...本当...何言ってんの？」

ちゃんとってなんだよ。
こういう恋愛ごとはお前の方が経験あるだろ、なんでそんな遠回しな言葉使うんだよ。

もっと、もっと俺にわかるように言ってよ。

やんわりと優しく掴んでいた腕を解かれてふわりと頭を撫でられる。瞬間に頭の先からつま先までぶわっと何かが走ったような感覚になって頬に水滴がこぼれた。何で今頭撫でるんだよ。なんのつもりなの。

もう一度、いつものようにじゃあねと手を振られる。

「待ってよ、ふっか」

バタンと俺ん家のドアが閉まる音がして部屋が真っ暗になる。
もう嫌だ。そうだ、俺じゃ釣り合ってなかったんだって。
胸の辺りから体の全身に広がる苦しさに悶えながら、フローリングを濡らす涙を袖で拭った。

もう一生、人の事を好きになんてならない。
そう強く思った、そんな別れだった。