だらしない妻と神経質な夫 9

スムーズな出産 ﾘｸ ページ23

先｢会陰切開する？どうする？｣

『無しで行けるなら無しがいいっす...』


点滴の針を刺されながら怖い話


先｢全然しなくてもいけそうだけど細かい傷はしょうがないね。よーし！次の陣痛からいきんでね？｣

『はぁい...』


今回も膝立ちで産んでいいらしい。ここに来て急にやばい事を思い出した。


『先生やばい...』

先｢お？どした？｣

『...浣腸してくんの忘れた』


シーンと静まり返る部屋とカンタくんをどつく富永さん。


カ｢なんで俺を殴るんだよ...｣

ト｢代わりに殴ってんだよ｣

先｢あははっ、いいよ？漏らしても笑｣

『トラウマになっちゃうよぉ...』

先｢大丈夫大丈夫！だいたい皆漏らす！｣

『う〇ち産みたくないよぉ...』


もう1回殴られて不服そうなカンタくんが私の頬を優しく抓る。


カ｢産むことに集中してください？｣

『んん、きた...』

先｢よーし、いきんで〜？｣


ゆっくりお腹に力を入れると、便なのかベビーなのか出てる気はする。


『漏らした絶対に...』

先｢朗報！漏らしてないよ〜！もうちょいもうちょい！｣

『んん...寛太...』

カ｢頑張れ...大丈夫大丈夫...｣


カンタくんの背中をぎゅっと握っていきむと急に力が抜けたように何かがずるりと抜け落ちた。


先｢上手い！おめでとう！18時23分女の子です！｣


そう言われても声が聞こえないもんだから誰しもが静かに息を呑んで待ってる。そして待ち望んでいた可愛らしい泣き声が聞こえてきた。


｢ふにゃあ〜！！｣

カ｢っ、A...ありがと...｣

『はぁ...よかった...』


身体の力を抜いた瞬間助産師さんの大声が響いた。


助｢先生！次の子が！｣

先｢おおっ！？｣

カ｢なんですか！？｣


私が力を入れてないのに何かがぬるんと出ていく感覚。何？後産？


先｢ハサミハサミ！皮膜児だ！｣

『せ、先生...？』

助｢初めて見ました！｣

先｢カメラマンくん！撮っといた方がいい！レア！パパも！｣

キ｢え？あ、はい！｣

カ｢ちょっとごめんね？｣


キイチとカンタくんが私のお尻側まで回ってビックリの顔。何〜？怖い怖い！！


先｢切るよ？｣

キ｢うわ...はい、映ってます！｣


何かを切る音とバシャッと響く水音。


先｢うわ〜綺麗に生まれたね〜？18時25分男の子でーす！｣


先生の声に被る様に力強い泣き声が聞こえてくる。なんの涙か分からないけどボロボロ溢れてきて、達成感でやっと一息。目を拭うといつの間に回したのか笑顔でカメラを構えた富永さんが居た。

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