お説教 ページ12
下呂温泉にやってきた私はあの日と同じ道を辿り全く同じものを食べ、全く同じ店へと向かっていた。見覚えのある場所で彼の思い出を辿っていると大好きな香りに包まれた。そこに居たのはカンタくんとキイチで何故かカメラを構えてる。状況が読めなくてぼうっとしてるうちにカンタくんは私の手を引いて旅館へと歩き出した。
『っ、あの...』
カ「いま、喋んないで。」
ピシャリと言い捨てられてしまったから黙って彼について行くとフロントで交渉をし始めた。
カ「予約が行き違いになってしまったようで、佐藤寛太で予約した方に彼女と僕が泊まらせてもらって、佐藤Aで予約してた方に彼が泊まるように変更出来たりしますか?」
「お連れ様全員が同意の上でしたら可能でございます」
カ「やっぱりたまには一人部屋の方がいい?」
『...いいえ、彼と同じ部屋に変えて下さい』
キ「俺1人が良いっす」
カ「すみません、じゃあそういうことで。」
案内されるままに部屋へと入り、キイチは後で荷物持っていくからと去っていった。部屋に流れる沈黙は酷く重いもので、こうさせたのは誰でもない私自身だ。口を開き謝ろうとした瞬間凄い勢いでカンタくんが飛び付いてきた。キツく抱き締められてしばらくは気付かなかったものの、彼はとても震えてるようだ。
『...ぁ、の、』
カ「意味が分かんない...」
『...ごめんなさい』
カ「嫌いなら嫌いって言えばいい!なんで!愛してるって言うくせに俺らを捨てた!ふざけんな!」
今までに見た事ないほど錯乱し号泣する彼は私の肩を強く握り締めて訴える。
『嫌ってない...』
カ「意味分かんない!説明しなさい!俺が手紙を見つけた時どんな気持ちだったと思う!?香梨那と澪と陽が何回ママって言ったか!キイチがどんな顔してたか想像出来る?トミーが...あのトミーが泣いたんだよ!勝手に居なくなるなんて許さない!逃げ切れると思うな!」
『ごめん...ごめんなさい...ほんとにごめんなさい...』
カンタくんがこんなに感情を顕にしてる姿は今までに見た事ない。それほど彼を苦しめたんだと思うと一体自分がどれ程愛されてるのかが分かった気がした。身体が引き寄せられて彼の腕の中に収まると、震えながら尚も泣く彼に何度もごめんなさいと謝り続けた。
しばらくしてキイチがやってくるとようやく身体が離れて、冷静に説明しなさいと諭された。
実に単純で情けない決意を話終える頃には2人とも相当お怒りの様子だった。
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ぴあ(プロフ) - 杏果さん» 検索ボックスの下に(R 18のみ)というフィルターがありますのでそちらを押してもらえると見つかりやすいです。勿論ですが18歳以下の方は見れませんのでご了承ください。 (2021年3月9日 8時) (レス) id: e3e12464ab (このIDを非表示/違反報告)
杏果(プロフ) - 読みましたっ!面白かったです! 番外編(裏)も読みたいのですが、どうやったら見つけられますか?(頑張って探しても見つからない…) (2021年3月6日 20時) (レス) id: eddee466ca (このIDを非表示/違反報告)
ぴあ(プロフ) - るちさん» コメントありがとうございます。私が今長編として書かせていただいている 3000/時 という作品には東海オンエアさんを沢山登場させていますので良ければご覧下さい。短編集まで閲覧ありがとうございます! (2020年12月2日 8時) (レス) id: e3e12464ab (このIDを非表示/違反報告)
るち(プロフ) - 長期更新お疲れ様でした!番外編を含む全てのお話とても楽しませて頂きました!短篇集も拝見しているのですがぴあ様が書かれる東海オンエアのお話がもっと読んでみたいです…! (2020年11月30日 23時) (レス) id: 4031c8ca36 (このIDを非表示/違反報告)
Yuki(プロフ) - 久しぶりにこの2人?の新しいお話読めて嬉しいです! (2020年11月17日 3時) (レス) id: 252584ae2a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぴあ | 作成日時:2020年7月12日 8時