【暗殺教室】1mgの希死念慮【赤羽業】 (ページ28)

今日:40 hit、昨日:3 hit、合計:7,483 hit

28mg ページ28

・

「へー、祇園って奥に入るとこんなに人気ないんだ」

「うん、一見さんお断りの店ばかりだから目的もなくフラッと来る人もいないし、見通しが良い必要もない」

「だから私の希望コースにしてみたの。暗殺にピッタリなんじゃないかって」

嫌な予感がいっそう強くなったのを感じた。

不良が仕掛けてくるなら、きっとここだ。

「ホントうってつけだ、なんでこんな拉致りやすい場所歩くかねぇ」

あーあ、来ちゃった。

班のメンバーに動揺が走るが、流石にカルマくんは落ち着いている。

私はどうやって最小限の被害だけでこの場を収めようかと状況を観察する。

最初のひとりは呆気なく倒れたが、その直後カルマくんが背後から殴られたのを見て諦めた。

逃げるのは無理そうだ、なら、せめて。

「ねぇおにーさんたち」

「ちょ、綿貫さん？！」

背後にクラスメイトを庇うようにして前に立つ。

「こんな子たちと遊んでないで私と遊ぼ？おにーさんたちのこと独り占めしたいな♡ 」

「 …ｯ」

「 Aちゃん… 」

恐怖を押し隠せ、できるだけ媚びて見せろ。

上目遣いのまま1歩前に出る。

私だけなら、どうとでもなる。

彼らとは親しくないし、私が居なくても旅行は楽しめるだろう。

「ま、それでもいいか」

リーダー格と思わしき男がそう言うのを聞いて心の中でほくそ笑む。

勝った。

彼らは着いてこられると面倒だからか、全員を気絶させると私を連れて車に乗り込んだ。

「な、まずはカラオケ行こーぜカラオケ」

「わ、やったぁ！」

ニコニコと愛想を振りまいたまま、目は窓の外を滑らせる。

どうやって帰ろう、このまま捨て置かれたらどうしよう。

カバンは置いてきてしまったし、土地勘もないため、一人で帰ることは出来ないだろう。

「俺にはわかるぜ、毛並みの良い奴等ほどよ、どこかで台無しになりたがってんだ」

ほんとはこっちの女にするつもりだったんだが、と見せられた写真には、髪を染めて派手な格好をした神崎さんが写っていた。

ああ、こんな感じも似合うんだなぁ、と場違いなことを考える。

私がどうなっていようと、周りに迷惑をかけてるわけじゃないのだからどうだっていい。

それよりもみんなは、カルマくんは無事だろうか。

不良たちにバレないように、泣きたい気持ちを押し殺した。

・