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2.5、雑用女の観察記(1) ページ6

あの女、なんでここに居るんだ?…雑用係だっけ。

俺はあの女は一般人っつうか、鬼では無いと思うんだけど…。

震えた身体。

勢い任せに出てきたのに妙に目が座っていた。

あの叫び声が脳裏をよぎる。

…うん、どう考えても巻き込まれたな。

審査の時にムダ先から聞いたけど…

あの女が乱入してくれたおかげで親父は致命傷を避けられたらしい。

親父はまだ病室で寝てるらしいけど、親父の分も礼を言わねえとな…。

どうにも話しかけづらくてそわそわする。

…ごめん、とも言った方がいいよな。

少年S


「雑用係」、そう名乗った女は物憂げに海を眺めたまま数十分前から動かなかった。

他人のことなんてどうでもいいはずだったが、どうにも彼女のことが気になってしまう。

あのバカが知っている様子だったからだろうか。

見た目はまったく異なるが、母と重なって見えたからだろうか。

沖の上は風が強くて彼女の髪を靡かせる。

そのままどこかに吹き飛んでしまいそうな気がした。

こんなこと、こんな奴、気にしてられないのに。

さっきの鬼ごっこで毒されたのだろうか。

訓練を中断してまで京都に雑務に行くなど時間の無駄だと思っていたが、彼女を観察するには向いているのかもしれない。

…名前、なんて言うんだろうな。

少年J


生徒たちがチラチラと視線を向ける相手。

無駄なことは好まないが、そうは言っても切り捨てることが出来ない一般人。

相手を知る時間というものが無駄でないことを彼女は嫌という程刻みつけてくれた。

まさか鬼でも桃でもない一般人を勘違いで殺しかけることになるとは思わなかった。

俺だけが知っている首元に残った無残な跡。

首元を覆う服で隠してはいるようだが、罪悪感がチクチクと刺すようだ。

酷いようなら京夜に見せてもいいかもしれない、と考えたところで京都が戦場になっている事を思い出す。

まだ着いていないとはいえ、気を引き締めなければ。

俺の緊張感がうつるのか、生徒たちも無意識にピリピリしているように見える。

いちばん能天気そうな「雑用係」が、大きくあくびをした。

青年N

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作者名:9109 | 作成日時:2023年4月26日 17時

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