【BL】機械音声【オリジナル】 (ページ2)

今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:6,144 hit

・ページ2

「業務報告を。」

僕もさっさと仕事をして眠ろうと側にいた直立不動の姿勢のロボットに話しかける。
何百回何千回と言った言葉だ。何の感情も込めずに口から出た言葉。

「１３５番、合成音声ネジが外れており修理中。２５番、誤操作により脳部分破壊、永久停止。」

片言な彼の声では違い限りなく人間に近い合成音声でデータを読み上げる人型のロボット。司令や管理系の仕事を務めている。
ここの下の階、即ち地下にはロボットを量産するロボット達がいる。それのリーダー的な存在が彼だ。

「＿＿＿以上です。その他の異常は見つかりません。」

報告が終わりガラス玉のような目で僕を見つめるロボットの目から逃げるように部屋から飛び出す。

怖いくらい静かな廊下を歩いて自室へ戻ると、虚ろな目で棒立ちしている彼がいた。

彼の隣にあるソファに座ると昔を思い出す、何で自分は部下に似せて作ってしまったんだろう。昔の僕を殴りたい。

クリスマスローズとやらをどこに飾ろうかと考えていると、試しに彼の手のひらを開かせ置いてみることにした。

「ふ……そういや花好きだったな」

懐かしみと自分への憎しみとのもつれ合った、かつて経験しない激しい情緒がすぐに僕の涙を誘い出した。僕は耐えきれず彼を抱きしめた。
噛みしめた歯の間から、やがて嗚咽が迸り出る。溢れるまでは涙が目を焼くほどに熱く、頬を伝わる時は総毛立つほど冷たい。

会いたい、彼の声が聞きたい＿＿＿。

＿＿＿＿＿＿＿＿
＿＿＿＿＿＿
＿＿＿＿

「清水さん、相談があるんですけど」

木製の扉を開けて顔を覗かせると、ロボットの目の前で倒れている清水さんが見えた。
すぐ駆け寄り肩を揺さぶるが、清水さんの顔は少しの生気もない灰色、死んでいる。

俺は走った動悸を数えるように息をする。少し落ち着いた所で、近くにある電話の受話器を取る。

「緊急事態発生。清水Aの死亡確認した。直ちに＿＿＿」

目の前で人が死んでいると言うのに自分でも信じられないほどの落ち着いた静かな声音。「了解」と言う相手の言葉を聞き、電話を切る。

「すみません…」

震えを帯びていった声は存分に涙にぬれているように響いた。