過保護 ページ18
「という訳で、お願い聞いてくんないかな?」
「現金なヤツだなお前……。感動を返せ」
少しうるっときた私に容赦なく用事を頼んでくる辺り、神は本当に要領が良くてずる賢い。
「今日、玄樹と一緒に帰ってやって」
「……え、なんで?」
「俺用事あってさ、玄樹1人になっちゃうから」
なんという過保護。
呆れた顔をしてしまっていたのか、神に肩を掴まれる。
「頼むよ」
「ま、まぁ別にいいけど…」
私がOKすると、神は安心したように笑った。
「じゃ、帰ろっか」
玄樹にそう声をかけ、駅まで向かう。
思えば最近はずっと廉と一緒に居たから、こうやってほのぼのする時間は少なかったなぁ、なんて思いながら玄樹と緩い会話をする。廉の元気さとは大違いだけど、普通に楽なこの感じが嫌いじゃない。
「にしても、神は本当に玄樹が大好きだね」
「それは否定しないかな」
「1人で帰せないとか、玄樹が痴漢でもされると思ってんのかな?」
うーん、と少し考える素振りをしたけど、玄樹は結局何も答えなかった。
駅に着いて、電車に乗り込む。
「帰宅ラッシュじゃん…」
私服は結構男っぽいとは言いつつも、顔が可愛い玄樹の事だ。本当に痴漢に遭うかもしれない。
そう思って気を引き締めて玄樹を壁側にして守る様に立っていると、少ししてから玄樹に服の袖を掴まれた。
「どうした?」
「……、…いや、大丈夫」
そうは言っても明らかにさっきより顔色が悪い。
どうしたものかと考えている間にも、玄樹の調子はどんどん悪くなっていて、私達は次の駅で電車から降りた。
「ここ座ってて、水買ってくるから」
「…ん、ごめん」
玄樹をホームの椅子に座らせ水を渡すと、少しだけ顔色が良くなってきていた。
「…………ごめんね、人混み苦手で」
「ううん、全然大丈夫だよ」
…神宮寺が玄樹を1人で帰したくない理由にようやく合点がいった。
玄樹の話だと、もっと悪い時は過呼吸になったりもするらしい。
「また神が一緒に帰れないって時は声かけてね。一緒に帰るからさ」
「…ありがと」
力なく笑う玄樹は少しだけ痛々しく見えた。
そのまま落ち着くまでホームでどうでもいい話をしたりして、空いてそうな電車が来てからそこに乗り込んだ。
その後、私が玄樹の家の近くまで送ろうか、と提案したのだが、玄樹は優しく笑いながら「もう大丈夫だから」と言ってきて、玄樹は「本当にありがとうね。龍こそ気を付けて帰って」と言いながら最寄り駅で降りていった。
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作者名:7 | 作成日時:2018年10月8日 20時