街の住人3 ページ6
アインスを見送ってすぐ。
突然謎の電波を受信したらしいミティが、
「あ、クララの骨董屋さん行こ!」
「く、クララ?」
誰それ、と問うより早く、ミティは私の腕を引っ張って連れて行った。
素直に言わせてもらおう。
腕、抜けそう。球体関節の直し方なんて知らないから! 頼むからやめて!!
ミティが口を尖らせながらも腕を離してくれたのは、それから20分ほど後のことだった。
私がミティに連れてこられたのは、
「お化け屋敷……?」
「違うよ、骨董屋さん」
そう、骨董屋さん。しかし、お化け屋敷と勘違いしてしまう程の不気味さが、そこにはあった。
長い間雨風に曝された石の壁。蔦で覆われている。伸び放題荒れ放題の庭は、手入れがされているようには見えない。
「なんか、一周回ってこういうデザインもアリな気がしてきた」
早くも混乱してきた私。
「ほら、早く入るよ」
ミティは、足場のない庭ではなく、裏口らしき木製扉から入店。私もあとに続いた。
石壁の内側は、意外にも丁寧に手入れされていた。アーチ形の門には薔薇の蔦が巻き付いているが、特に荒れている様子はない。
カランコロンと可愛らしいベルの音と共に、甘い匂いが漂ってきた。
……あれ、ここってお菓子屋さんだったけ。
骨董屋だとわかっていても勘違いしてしまうほどの、お菓子の香り。この香ばしい匂い、クッキーでも焼いていたのだろうか。
「クララ! 来たよー!」
近所迷惑にならないかと心配レベルの大声。よくよく考えたらここは大きな敷地内で、近所に家なんてなかった。この地へ辿り着くまでおよそ30分。歩き続けたことに我ながら感心する。
コツ、コツ、と音がした。
床から? いや違う、これは向こうの階段から。
「あら、ミティちゃん」
姿を現したのは、一体のフランス人形。どうやら履いていたヒールの踵が音の発生源だったようだ。
というかこのフランス人形──
「花子……?」
ミティ同様、昔持っていた人形。
「おや」
私の存在にようやく気付いたクララと呼ばれたフランス人形の少女は、私の顔を見て不思議そうな表情になった。
忘れていたが私は今球体関節人形なのだ。同じ過ちを二度も繰り返すなんて、と自分に呆れる。
「いえ、なんでもないです」
私は慌てて取り繕った。
彼女はまだ何か言いたげだったが、これ以上詮索されてもどうせ信じてもらえない事実が飛び出してくるだけ。
今は、黙っていてほしいな。
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葉月だんご(プロフ) - 麦カケさん» 感想ありがとうございます〜! 私も書いてるとき、主人公の正体をバラそうか隠そうか迷いました(笑) 今後の展開にもぜひ、ご期待ください(*´ω`*) (2020年12月30日 23時) (レス) id: 1261bb0f48 (このIDを非表示/違反報告)
麦カケ(プロフ) - 初めまして。人形達が持ち主だって気づいてない所がせつないです(でもそう言う設定好きです)これからどう言う展開になっていくのか気になります。無理せず作者様のペースで頑張ってください! (2020年12月30日 17時) (レス) id: ea0439ca7f (このIDを非表示/違反報告)
葉月だんご(プロフ) - 千々さん» コメントありがとうございます♪ お気に召していただけたようで何よりです! この感想を糧に引き続き更新がんばりますので、お付き合いいただけたら幸いです〜(*´艸`*) (2020年3月30日 17時) (レス) id: 3d624ae683 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - オリジナルでいい作品を久しぶりに見つけられました! 人形たちの微笑ましい生活をこれからも見ていきたいと思います! (2020年3月15日 13時) (レス) id: df88b28f21 (このIDを非表示/違反報告)
だんご(プロフ) - ぐうたら猫さん» コメントありがとうございます〜! 気に入っていただけたようで何よりです♪ ネコのぬいぐるみってカワイイですよね← (2020年1月8日 2時) (レス) id: 3d624ae683 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:葉月だんご | 作成日時:2019年10月19日 12時