街の創世主1 ページ26
「まだ『逆迷子』について何も話しておらんぞ!」
と掠れ声で引き留めるカザーには胸中で謝り、私はカザー宅を後にした。
早く──早く、向かわないと。
(……って、ここからどうやって家に帰るんだっけ)
カザーの家は街のちょうど中心辺りに位置していたはず。
南に向かえばいいのはわかるが、果たして南はどの方角なのか……典型的な地図が読めない人間(今は人形だが)の私には到底わかるはずもなかった。
(交番……は、ないか。治安良いもんなぁこの街)
「A?」
「えっ」
仕方ない次に道を通りかかった人に訊くか、と頭を振ったそのとき、背後で唐突に名を呼ばれた。
驚いて振り返ると、そこには無表情のイヌの少年が立っていた。その手にはいつもと同じ釣り道具が握られている。
……ところでこの街の住人はどうしてこうも背後から現れるのだろう。
「アインス……! ──ちょうどよかった、道を訊きたくて」
「いいけど」
よかった、快く……かどうかは不明だが了承してくれたみたいだ。
アインスは端的に、
「そこに見える角を右に曲がって、次に
「ありがとう、なるほど新橋色……」
「青っぽい色」
「あっうん」
色のイメージがついていないのが秒でバレた。なんで。
……ともかく教えてもらった通りに進むことにする。
「ちょっと待って」
「ほぇ?」
想定外のアインスの声に、早速、と足を踏み出した私はつんのめる。
今のは無言で私を見送るシーンでは?? なんてメタいことは言わない、言わないが。
「──僕、考えたんだ」
「……」
「あの日、Aの言葉を聞いて──考え直してみた。自分が、本当はどうしたいのか……どうなりたいのか」
──あぁ、思い出した。
河原で彼のスケッチブックを見たとき、確かに私はこう言ったのだ。
『私も、マグドナルドの味をもう一度楽しみたい。もしあなたがそれを望んでいるなら、私は応援してるから』
アインスは、ようやく自分なりの答えを見つけ出せたのだろう。
アインスに向き直った私をちらりと一瞥し、彼はカバンからスケッチブックを取り出した。
「それ、あのときの」
「そう。マッグの絵……なんだけど」
パラパラとページをめくる音と共に、これまでのマッグの絵が走馬灯のように流れていく。
色とりどりの画材で描かれたそれを、綺麗だな、と眺めつつ。
「僕、夢を叶えたい」
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葉月だんご(プロフ) - 麦カケさん» 感想ありがとうございます〜! 私も書いてるとき、主人公の正体をバラそうか隠そうか迷いました(笑) 今後の展開にもぜひ、ご期待ください(*´ω`*) (2020年12月30日 23時) (レス) id: 1261bb0f48 (このIDを非表示/違反報告)
麦カケ(プロフ) - 初めまして。人形達が持ち主だって気づいてない所がせつないです(でもそう言う設定好きです)これからどう言う展開になっていくのか気になります。無理せず作者様のペースで頑張ってください! (2020年12月30日 17時) (レス) id: ea0439ca7f (このIDを非表示/違反報告)
葉月だんご(プロフ) - 千々さん» コメントありがとうございます♪ お気に召していただけたようで何よりです! この感想を糧に引き続き更新がんばりますので、お付き合いいただけたら幸いです〜(*´艸`*) (2020年3月30日 17時) (レス) id: 3d624ae683 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - オリジナルでいい作品を久しぶりに見つけられました! 人形たちの微笑ましい生活をこれからも見ていきたいと思います! (2020年3月15日 13時) (レス) id: df88b28f21 (このIDを非表示/違反報告)
だんご(プロフ) - ぐうたら猫さん» コメントありがとうございます〜! 気に入っていただけたようで何よりです♪ ネコのぬいぐるみってカワイイですよね← (2020年1月8日 2時) (レス) id: 3d624ae683 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:葉月だんご | 作成日時:2019年10月19日 12時