何しに来た ページ12
彼女が目覚めていたと知った瞬間、三郎次の顔がサアッと青くなる。
今すぐにでも握っている苦無を布団から抜いて、彼女の首に突きつけたいはずなのに。
彼女は三郎次の腕ごと掴んでそのまま力を入れた。
さすがに折れるほどのものではないが、女にしてはかなり強い力に三郎次の顔は歪んだ。
その隙に彼女はもう片方の手で三郎次の肩を掴み、ぐりんと大勢を逆転させた。
つまり、今度は彼女が三郎次を押し倒す形になった。
「……誰だと聞いている」
「…っ池田三郎次11歳！」
「……朝霧A14歳」
(いやなんでこの状況でお互い自己紹介！？)
兵助は思わずツッコみそうになったが、そこは流石上級生。
心の中で荒ぶりながら見守ることにした。
「……何しに来た」
「っうるさい！
お前らのせいで、お前らのせいで、と言葉を繰り返す三郎次。
先輩達との仲を取り戻した者ですら“これ”なのだ。
一体どれだけ天女は許されざることをしたのだろう。
だが今は、疑問よりも優先すべきことがあるはずだ。
「……もう一度聞く、何しに来た」
「！」
至近距離でやっと気づいた。
月の光に照らされて反射したのは、狐面だけではなくその奥もきらりと光っていた。
青だ。
どこまでも深くて、穢れを知らない澄んだ青だった。
そしてその青は、角度の問題で今現在三郎次にしか見えていない。
「……っ！！」
その青は冷たくない。暖かくもない。殺意が込もっているわけでもない。
ただ純粋に、ひたすらに美しかった。
彼女の名を聞いた時点で既に分かっていた。
彼女の瞳を見た時に確信した。
彼女は朝霧A。
伊助やきり丸の恩人で、自分達の恩人だ。
一方で彼女も、“お前らのせいで”と言う三郎次の言葉が本心ではないことに気づいていた。
“何しに来た”
「……お願いです…
みんなを助けてください…お願いします…！」
彼女の瞳には、大きな目からポロポロと涙を零す三郎次の姿が映った。
先輩達との仲を取り戻せたといえど、それで解決なわけがない。
自分達の委員会だけだ。
自分達だけだ。
助けたいのに自分は何もできない。
自分の弱さを悔やんでも何にもならない。
今ここで泣くのはダメなのに。
1番苦しいのは本人達のはずなのに。
逃れようのない悔しさの中、苦無を握る手から暖かい感触が伝った。
「約束する」
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HANON(プロフ) - くまのんさん» 光栄です。ありがとうございます。 (5月4日 21時) (
レス) id: 42f4c6aba7 (このIDを非表示/違反報告)
くまのん - とっても面白かったです‼ (5月3日 21時) (レス) @page25 id: 333fed96b4 (このIDを非表示/違反報告)
HANON(プロフ) - 不透明どろっぷ。さん» ありがとうございます。更新はめちゃくちゃ不定期なので、ふと思い出した時に見ていただけたら嬉しいです。 (2月8日 23時) (レス) id: 42f4c6aba7 (このIDを非表示/違反報告)
不透明どろっぷ。(プロフ) - 3年ぶりくらいに見てみたら結構進んでた…！今見返してみたからこそわかるネタとかも結構あって面白かったです。続き楽しみにしてます。 (12月22日 23時) (レス) @page25 id: f6e73ed9d2 (このIDを非表示/違反報告)
HANON(プロフ) - あまねさん» 見つけてくれてありがとうございます (11月5日 12時) (レス) @page24 id: 42f4c6aba7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：HANON | 作成日時：2019年9月26日 23時
