彼に権利は存在するか ページ26
�狄佑話�かに『生きていいよ』と云われなくちゃ、生きていけないんだ！��
判っている。
――――――
人に有らざる悪魔に、人の親に成る権利など存在しない。
これは芥川が誰にも言ってはいない事であるが、もしも、あの子供が本当に芥川の子どもで、生きる許可を出すのが親である芥川の役目なのだとしたら、芥川は子供を殺してしまおうと思っている。
自らの意思でマフィアに所属し、その異能を使って大勢殺した。数え切れないくらいの恨みや怨念を背負っている。報復に来る者が居たとして、芥川を狙う誰かの敵意が、なにも芥川だけに向けられるとは限らない。
故に芥川には我が子に「安心して生きていいよ」と言えるだけの保証がない。己が業に巻き込んでしまうくらいなら、幼いうちに、苦しまぬよう楽に殺してしまった方が良いのだ。
ふと、敵の異能により朽ちかけた外套から、乾いた紙が擦れる音が聞こえた。芥川は懐にあの幼子が描いた絵を入れていた事を思い出し、顔を顰める。恐らくそれが外套と同じ程度かそれ以上には朽ちているだろうということが簡単に察せられたからだ。
取り出した紙は、まるで随分長い時間を経たが如く変色しており、広げてみると脆くなった端が僅かに崩れた。
少しでも力を込めて握れば、それは今度こそ塵と化すだろう。
──あの子供に何か言われたら、適当に無くしたと言えばいい。此処で捨ててしまおうか。
指に力を込め、
「……」
そのままぐしゃりと潰す事はしなかった。
「あれは無くしてしまった」と告げられた子供の表情は傍目から見れば変わらなくとも、確かに、そばに居る者しか判らない程度にはきっと悲しそうにするのだろう。
強請られるままに抱き上げれば満足そうに息を吐く。
たまに頭を撫でてやれば少しだけ笑う。
無表情なばかりかと思えば、きちんと物事に対して年相応の反応は返しているのだと最近になって判った。
芥川はもう一度、手の中の拙い絵を見つめた。
良く見れば、幼子にしては中々の出来映えなのではないか。帰ったら本当に褒めてやるのも好いかもしれない。
──そうしていつか、殺してやるのだ。恐怖は与える隙も無いほど一瞬で。
瓦礫の下敷きになった敵の血溜まりを眺めながら、そんな事を考えていた。
「……？ 痛い……」
傷が深かったのだろうか、突如棘を刺されたような痛みを訴える胸を、芥川は無意識に握り締めた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 363人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
糖莉 - めっちゃくちゃ面白くて一気読みしてしまいました。最後がとても感動？してグッときました。この作品に出会えてとても良かったです！ (2022年1月30日 22時) (
レス) @page50 id: b9fd4d8946 (このIDを非表示/違反報告)
獏(プロフ) - 完結されてから時間が経ちましたが、どうしても感想を伝えたくなり書き込みました。すごく好みの作品でした。最後に芥川さんが名前をつけようとするところがグッときて仕方がありませんでした。こんなに良い作品に出会えて嬉しかったです。ありがとうございました (2021年8月7日 18時) (レス) id: e438c140c8 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - dekuさん» ありがとうございます！！ 完結した今でもこうして感想が来るのは本当に嬉しいです！！敦くんの話はもっと丁寧にやりたかったな〜と思っていましたが話数の都合で断念（-人-） (2019年6月30日 13時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - しぇるふぃあ。((芦原晴))さん» 語彙力のある感想に死にそうになってます……一気読みお疲れ様でした本当にありがとうございます幸せです 変わったとはいえ芥川にとって我が子に上手く愛情を注ぐのはきっと難しい事で将来は色々苦悩したりすると思います笑 (2019年6月30日 13時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - 秋霖時雨さん» ありがとうございます！ 彼は自分の事を「卑しい身の上」だと思っている部分は多少なりともあって 自分の血を引いた子供は不幸になる と考えいた芥川が諸々吹っ切れた台詞だったりします(こっそり) (2019年6月30日 13時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こめ(元団子) | 作成日時：2018年10月14日 18時
