ねんねしな ページ20
「寝ろ」
蓋をするように毛布を被された子供は、ぱちりと瞬いて芥川を見上げた。
芥川はちらりと壁にかけられた時計を見やり、針がきっかり夜の十時を指している事を確認した。
『夜十時には寝かしつけて』
銀が言った事のうちの一つ。芥川は一応それを遂行していた。食事も風呂も済ませ、後は寝かせるだけだ。
何時もは銀と二人眠っていた子供は、今日は一人銀の寝台で眠る。
「朝には起こしに来る。好いな？」
「ん」
幼子は眠りに落ちる感覚に、自身の消失──つまり�犹爿瓩鯀曚ぁ△修龍寡櫃�ら夜泣くと聞く。
芥川の言いつけ通り眠ろうと素直に目を閉じた子供に、少なくともそのような恐怖と直面している様子はない。杞憂であったか、と芥川は思った。
消灯。扉は閉じられ、遠ざかる芥川の足音を聞いて暫く後、子供は静かに寝息を立て始めた。
□□□
�爐佑鵑佑鵑海蹐蠅茵帖帖弔�ころりよ…………��
�猖靴笋呂茲せ劼澄帖帖帖弔佑鵑佑靴福帖帖牒�
優しい声で歌う女。近くにいるのに不思議と顔の造形は判らない。ただ女の愛おしげに細められた瞳だけははっきりと見えた。そこに映るのは赤子だ。笑顔を浮かべ、頭を撫でる手を幸福そうに享受している。
──之は夢だ。僕が作り出した幻だ。
物心ついた時には地獄のような場所で妹や仲間と助け合い野犬のように暮らしていた。然し、かつては僕にも居たのだろうか。彼のように抱き上げ子守唄を歌ってくれるような人が。
もしそうであると云うのなら、どんなに──、
�爐諭�見て。こんなに可愛い��
�猖困譴覆い如Ｋ傭�は君らの都合で如何にもできる存在なんだ��
�爐僂儉�
「おとうさん」
子供の声で目が覚めた。寝起きの倦怠感から醒めぬまま、もぞりと寝返りを打つ。月灯りが惘乎と射し込む薄闇の中、寝台の横からこちらを覗き込む子供がいた。身長が足りないのだろう、目から下は隠れて見えない。
「……厠か？」
「ちがう」
子供の意図が判らず眉を寄せた。側の置時計を見れば午前の三時を回っている。幼子は寝るべき時間帯だ。銀の部屋に戻すのも面倒だと思い、横たわったまま腕を伸ばし、子供の服を掴んで己の隣に置いた。
「未だ寝ていろ」
自分の体を覆っている毛布を引っ張り、きょとりと此方を見つめる子供の体にも被せる。
ゆるりと頭を撫でてやれば、徐々に下降を始めた子供の瞼につられるように、僕の意識も暗闇の底へと落ちて行った。不思議と心地好い、何年ぶりかの感覚に素直に身を預けた。
おまけ：樋「先輩まさか……！」芥「違う。…待て通報するなマフィアが」→←おまけ：太宰治はこんらんした
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糖莉 - めっちゃくちゃ面白くて一気読みしてしまいました。最後がとても感動？してグッときました。この作品に出会えてとても良かったです！ (2022年1月30日 22時) (
レス) @page50 id: b9fd4d8946 (このIDを非表示/違反報告)
獏(プロフ) - 完結されてから時間が経ちましたが、どうしても感想を伝えたくなり書き込みました。すごく好みの作品でした。最後に芥川さんが名前をつけようとするところがグッときて仕方がありませんでした。こんなに良い作品に出会えて嬉しかったです。ありがとうございました (2021年8月7日 18時) (レス) id: e438c140c8 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - dekuさん» ありがとうございます！！ 完結した今でもこうして感想が来るのは本当に嬉しいです！！敦くんの話はもっと丁寧にやりたかったな〜と思っていましたが話数の都合で断念（-人-） (2019年6月30日 13時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - しぇるふぃあ。((芦原晴))さん» 語彙力のある感想に死にそうになってます……一気読みお疲れ様でした本当にありがとうございます幸せです 変わったとはいえ芥川にとって我が子に上手く愛情を注ぐのはきっと難しい事で将来は色々苦悩したりすると思います笑 (2019年6月30日 13時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - 秋霖時雨さん» ありがとうございます！ 彼は自分の事を「卑しい身の上」だと思っている部分は多少なりともあって 自分の血を引いた子供は不幸になる と考えいた芥川が諸々吹っ切れた台詞だったりします(こっそり) (2019年6月30日 13時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こめ(元団子) | 作成日時：2018年10月14日 18時
