とらうま と まいご ページ14
辺りが紫色に暮れ出す頃、和装の少女が少し急ぎ足で歩いていた。名を泉鏡花と云う。武装探偵社の一員だ。
──書類を渡しに行くだけの、簡単な仕事だった。だから早く帰るつもりでいたのだ。ただ少し、美味しそうな甘味屋があって、そこにこれまた大蛇の如く人が並んで居たものだから。
今頃、私を光の世界へ連れ出した彼は心配しているだろうか。だとしたら、少し嬉しい。
�猗爿瓩鮖廚そ个掘�僅かに頬を紅潮させる鏡花の視界がある物を捉えた。小さな子供が独りで居る。辺りに保護者らしき人物の姿は見えない。
鏡花は無意識のうちに足を止めていた。
「如何したの？ 迷子？」
子供は頷いた。何故だかぶかぶかの帽子を目深く被っているせいで表情は見えない。風で飛ばされた帽子を追い掛けている内に父親を見失ってしまったのだと言う。
自分の居場所に帰れずたった一人で街をさ迷う子供に、嘗ての己の姿を重ねた鏡花は、それでも子供には探す父親が存在する事が少し羨ましかった。
「大丈夫。私も一緒に貴女の父様を探すから」
私は探偵社に助けられた。ならば私も、誰かを助けたいと思う。
そうして、私は人を殺さねば無価値な人間ではないと証明できたなら。
鏡花は子どもの手を取り、
「──、」
弱く握り返してきた手は酷く小さかった。
そうだ。私が最後に殺した男の子の手も、これくらいだった。
□□□
自分から離れた責を子供に問うには幼すぎる。風が一陣吹いたと思った時には、もう子供の姿は何処にもなかった。
保護者としての責任を果たせずにいる自分の現状に舌打ちがしたくなる。
芥川は、まるで掻き消えるように居なくなった子供に、世間一般の親が子と手を繋ぎたがる理由が、愛情を示すだけの行為では無い事を理解した。こうして子供が予告なく何処ぞに行き、己の手を煩わせるのを防ぐ為でもあったのだ。
ポートマフィア本部内では、一人で行動する事も多々あったそうだが、それはあくまで室内での話だ。本部内も絶対安全とは言い難いが、銀のように子供を愛育する者、中原幹部のように子供を気に掛けてやる者、彼等がある程度の実力者であった為、彼等に従属する部下達の手によって、暴力が全てを支配する場であるとは思えぬほど生温い庇護下の元、子供は守られていた。
──ともかくにも、彼奴を早く見つけてやらねば。
以前の様に「僕には関係の無い事だ」と、広くて常に危険の伴う外の世界に、子供を放り出す事は、少し躊躇われた。
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糖莉 - めっちゃくちゃ面白くて一気読みしてしまいました。最後がとても感動？してグッときました。この作品に出会えてとても良かったです！ (2022年1月30日 22時) (
レス) @page50 id: b9fd4d8946 (このIDを非表示/違反報告)
獏(プロフ) - 完結されてから時間が経ちましたが、どうしても感想を伝えたくなり書き込みました。すごく好みの作品でした。最後に芥川さんが名前をつけようとするところがグッときて仕方がありませんでした。こんなに良い作品に出会えて嬉しかったです。ありがとうございました (2021年8月7日 18時) (レス) id: e438c140c8 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - dekuさん» ありがとうございます！！ 完結した今でもこうして感想が来るのは本当に嬉しいです！！敦くんの話はもっと丁寧にやりたかったな〜と思っていましたが話数の都合で断念（-人-） (2019年6月30日 13時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - しぇるふぃあ。((芦原晴))さん» 語彙力のある感想に死にそうになってます……一気読みお疲れ様でした本当にありがとうございます幸せです 変わったとはいえ芥川にとって我が子に上手く愛情を注ぐのはきっと難しい事で将来は色々苦悩したりすると思います笑 (2019年6月30日 13時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - 秋霖時雨さん» ありがとうございます！ 彼は自分の事を「卑しい身の上」だと思っている部分は多少なりともあって 自分の血を引いた子供は不幸になる と考えいた芥川が諸々吹っ切れた台詞だったりします(こっそり) (2019年6月30日 13時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こめ(元団子) | 作成日時：2018年10月14日 18時
