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自身が父と呼ぶ男と何処かで会った事があるような無いような男が凄まじい闘乱を繰り広げている間、子供は言われた通りそこから離れた地で大人しく座っていた。退屈しのぎに手に持って弄んでいたタイマーに視線を落とす。
制限時間が残り5分を切ったとき、変化は訪れた。デジタル表記の数字が赤く点滅しだしたのだ。子供は数字は読めずとも、ここに表示されている文字を見た芥川がほんの少し焦っていた事は覚えていた。故に、『時計が変になった』と、芥川にそう伝えようとした。
「おとうさん」三度に渡る呼びかけに対する応答はなく、子供は芥川に近づいた。
「芥川! もう体力切れか!?」
「五月蝿い! 蝿のように彼方此方動き回りおって!」
白熱していた戦いの最中、二人は少々周りが見えなくなっていた。背後に大きく引いた芥川の脚は、子供の体を弾くには充分で、衝撃を吸収する脂肪も筋肉も少ない小さな体は受け身も取れず床に叩きつけられた。
「あ」
敦が言えたのはそれだけだった。それから、一瞬で青ざめた芥川の顔を見た。
何が起きたかいまいち分かっていないまま子供は上体を起こし、ちかちかと点滅する視界の中、熱を持つ後頭部に手を当てた。それを上から包み込むように、些か慌てたように撫で付ける大きな手の感触があり、子供は不思議に思って瞬いた。
「僕の声は正常に聞こえるか? 視界はどうだ、明瞭か?」
矢継ぎ早に投げ掛けられる言葉を聞きながら、子供はいつもとは違った様子の芥川を見上げた。平然と己を見返す子供の態度に、柄にもなく慌てふためいている自分が滑稽に感じられた芥川は元来の神色自若を取り戻し、子供を抱き上げた。
「……すまんな。僕が悪かった」
とんとんとあやすように背中を叩かれ、それが何時もより優しく暖かであったため、眠気を催した子供は、芥川の首に腕を回し欠伸をした。
「ふあ」
その瞬間、青白い閃光が空間中に走り、敦と芥川は思わず目を瞑った。
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ロト - こめ(元団子)さん» こめさん、ありがとうございます!芥川兄妹と幼児ちゃんがベビーカステラもぐもぐしながら帰るのを想像したらほのぼので悶えました(笑) (2019年8月31日 17時) (レス) id: 84710b8cd8 (このIDを非表示/違反報告)
月華(プロフ) - こめ(元団子)さん» またリクします!「任務を頑張る芥川さんの為に、銀ちゃんに手伝ってもらいながら、夢主ちゃんがご飯を作る」というお話をお願いします! (2019年8月27日 12時) (レス) id: 59746b99e9 (このIDを非表示/違反報告)
月華(プロフ) - こめ(元団子)さん» こめさん、リクありがとうです!知らない人から食べ物を貰うのは良くないって、本当に思いました。農薬入りのお菓子、怖すぎる・・!夢主ちゃんが食べなくて良かった〜! (2019年8月27日 12時) (レス) id: 59746b99e9 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - ダークアリスさん» 了解です! リクありがとうございます〜 (2019年8月27日 12時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - 月華さん» リクありがとうです! 書きましたけど人のじっとりとした悪意の話に…ww (2019年8月27日 12時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こめ | 作成日時:2019年6月23日 22時