リク【夢主が不審者からお菓子を貰ったら】 ページ22
基本的に、芥川は子供を放任している。故に、マフィアの建物内で誰が与えたのかも知らん菓子類を子供が食していても芥川は特に気に留めはしない。
「げ。芥川」
とある街角にて。不本意ながら対峙してしまった青年が露骨に嫌そうな顔をするのを見て、芥川は無言で眉根を寄せた。芥川が足元に戯れ付く子供を軽く追い払うと、青年──敦は、咎めるように「おい」と声を上げた。
「そんな風に扱わなくてもいいだろ。お前の子じゃないか」
「何だ、不遇な己の過去に重ねたか。……安心せよ。貴様の幼少期よりは真面な待遇をしている」
心の柔い所を掠めるような弁舌にカチンときた敦が反駁する。あとはもう売り言葉に買い言葉だ。敦は常ならとうに暴力に訴えている芥川が今日は口喧嘩だけに留めているのを不思議に思った。感情が昂った芥川の背後では羅生門が揺らめいていたが、それを敦に向ける気はないようだ。
ふと、芥川が敦から目を逸らした。少し見開かれた瞳はやや下を見ている。
「?」
敦と芥川から少し離れた場所に居た幼子は、白髪を揺らして芥川を振り返った。幼子は先刻までは無かった筈の個包装の焼き菓子を持っており、小さな手には余るそれを抱えたまま、ぱたぱたと芥川の傍に近寄った。
芥川は未開封の菓子を指し、「これは誰に貰った」と子供に問うた。
「むー」
「答えろ」
「ひみつ」
「僕の前で秘匿は許さぬ。答えろ」
強く詰め寄りながらも子供の手からさり気なく菓子を取り上げる芥川を眺め、そのくらい許してやればいいのに、と敦は思った。
「おじさん、にもらった」
「ほう。其奴はマフィアの傘下の者か?」
「?」
「……僕と菓子を呉れた者が一度でも話しているのを見た事があるか」
「ない」
「ならばこれは食うな。今後は外で物を受け取るのも止せ」
敦は引いた目で芥川を見た。芥川は不愉快そうに敦を振り返った。
「親切な人に菓子を貰うくらい普通にあるだろ。大袈裟な……」
「ふん。お目出度い頭だな。僕の生業は人の怨みを買うもの、その矛先が僕だけに向けられるとも限らぬ。用心に越した事はあるまい」
「これは貴様にやる」と投げ渡された菓子を捨てる事も憚られ、敦は釈然としないまま探偵社の事務所に戻った。乱歩がひょいと敦に視線をやる。
「敦、それ食うなよ。農薬混ぜられてるから」
「まあお前なら腹壊すだけで済みそうだけどー」と乱歩はカラカラ笑い、青ざめた敦はすぐさま塵箱に菓子を突っ込んだ。
終わり ログインすれば
この作者の新作が読める(完全無料)
←リク【芥川兄妹と幼児がお祭りに行く】
101人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ロト - こめ(元団子)さん» こめさん、ありがとうございます!芥川兄妹と幼児ちゃんがベビーカステラもぐもぐしながら帰るのを想像したらほのぼので悶えました(笑) (2019年8月31日 17時) (レス) id: 84710b8cd8 (このIDを非表示/違反報告)
月華(プロフ) - こめ(元団子)さん» またリクします!「任務を頑張る芥川さんの為に、銀ちゃんに手伝ってもらいながら、夢主ちゃんがご飯を作る」というお話をお願いします! (2019年8月27日 12時) (レス) id: 59746b99e9 (このIDを非表示/違反報告)
月華(プロフ) - こめ(元団子)さん» こめさん、リクありがとうです!知らない人から食べ物を貰うのは良くないって、本当に思いました。農薬入りのお菓子、怖すぎる・・!夢主ちゃんが食べなくて良かった〜! (2019年8月27日 12時) (レス) id: 59746b99e9 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - ダークアリスさん» 了解です! リクありがとうございます〜 (2019年8月27日 12時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - 月華さん» リクありがとうです! 書きましたけど人のじっとりとした悪意の話に…ww (2019年8月27日 12時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:こめ | 作成日時:2019年6月23日 22時