道化はわらい 蟄蝉セ帙?豁サ縺ャ ページ49
「あ、起きた?」
外套に視界を覆われ、いつの間にか閉じていたらしい目蓋を開けた時、子供は走行中の車の後部座席に居た。隣には道化師の格好をした男が脚を組んで座っており、呆然とする子供に気付くと、その眼前で愉しそうに手を振ってみせた。
「……?」
「痛い痛い! 指に逆関節キメないで!」
「その仮面、片目隠れてるけど見え辛くないのか」
「これはこう云うデザイン……やばい いざツッコまれると恥ずかしいな」
子供は黒いシートに座り直し、大仰な動作で顔を手で覆う男の肩口をじっと見つめた。編んで垂らされた髪が男の動きに合わせて揺れている。
「わー、長い三つ編み」
「ハハーン、さては君のびのびと育てられたな?」
ねえねえ、と肩をつついてくる指を無視し、子供は窓の方に顔を向けた。左右の窓は黒い布のようなもので確りと覆われており、外の様子を伺い見る事はできない。
前部座席とは遮断されている。
自分と、道化師の男しかいない空間。
男は笑いながら両手を広げ、子供に言った。
「此処でクイズ! 僕が君を誘拐した目的は何でしょう!?」
「……誘拐?」
首を傾げる子供の様子を見て、男は残念そうに肩を竦めた。
「ありゃ。そこから判ってなかったか」
「! あれか。コアラが食べる葉」
「ユーカリだね!」
「白米にかける……」
「ゆかり!」
「違う違う。もう正解云っちゃうよ!?……うん、時間も丁度良い」
男は右腕を外套で隠し、腕時計を覗き込む素振りをした。その直後、子供の背後でカチリと何かが外される音が鳴った。硬い物が後頭部に押し付けられる感触。
先程まで外套に覆われていた男の右腕は、手首から先がスッパリと消えている。男は目を細め、唇の端を吊り上げて笑った。
「あ、」
「君に自分自身を知ってもらう為さ!」
ドン、と強い音が閉塞された空間に隠る。子供の視界は暗転し、そこで意識は途絶えた。
■
『──この、粗忽者が!』
熱を持って痛む頬に触れ、少女は息を荒らげる男を見上げた。喉の奥に鉄臭い液体が絡んでいて上手く発声ができず、少女は小さく咳き込んだ。
『……済まない。叩いて悪かった』
男は膝をつき、袖で口元を拭っている少女を胸に抱き寄せた。白い手が少女の背を摩る。いい子だよ、お前は、と何処か言い聞かせるように後頭部を撫でられる。
触れ合った部位からじわじわと赤く染められてゆく男の衣服を見て、お揃いだ、と今よりずっと幼い声が嬉しそうに告げた。
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ロト - こめ(元団子)さん» お久しぶりです!最近わりと多忙でした…少し時間が空いてきたので見てみようと思えば結構更新されてて嬉しかったです!癒されました〜! (2019年8月25日 23時) (レス) id: 84710b8cd8 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - ロトさん» ロトさん! お久しぶりですね! そうです娘主は奔放な子供なので自由に遊び回っては国木田さんに叱られ 最終的には追いかけ回されますw (2019年8月25日 22時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
ロト - 近所迷惑(社員寮)……つまり、国木田さんの胃痛が増すんですね分かります。 (2019年8月25日 1時) (レス) id: 84710b8cd8 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - 来霧さん» やったー!ありがとうございます これからもお付き合いください! (2019年8月19日 2時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
来霧(プロフ) - 続きが!きになりすぎます!!応援していますー!頑張ってください! (2019年8月17日 0時) (レス) id: cc1c1fbc8a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こめ | 作成日時:2019年6月22日 21時