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禍福は糾える縄の如し ページ36

子供は面食らったように瞬いた。なぜ芥川が帰宅を促すのか分からなかったからだ。


「私はもうしばらく此処にいたいんだ。芥川さんには関係ない」


芥川の表情が凍り付く。子供は芥川の白い顔を眺め、首を傾げた。それから彼の周囲をぐるりと回ってみても反応がなかったので、無人の遊具の元に戻ろうとした。


「待て」

「わあ」


不意に黒い布が子供の胴に巻き付き、再び芥川の前に引き寄せた。子供は芥川の少し怒っているような、苛立っているような顔を見上げた。


「答えよ。Aは相手が人虎でも先程と同じ発言をしたか」

「……じんこ?」


「中島敦の事だ」芥川は吐き捨てるように言った。

子供は敦との会話を思い返す。彼とは芥川と同じようなやり取りをしたことがあったか……。

「何事も経験です!」と笑顔の賢治に渡された作業着と稲。暇を持て余した子供が賢治の田植えを手伝った際、夕刻になって敦が子供を迎えに来たことがあった。


『Aちゃん、そろそろ帰ろう? 鏡花ちゃんがご飯作って待ってるよ』


「同じ発言はしなかったな。一緒に帰った」


芥川の瞳孔が猛禽類のように大きく広がる。暗がり故、子供は芥川が静かに拳を握りしめた事は判らなかった。


「何故だ、なぜ……」


芥川は呻くように呟いた。ゆっくりと、だが重々しく地を這うような声が子供の足元を掠める。本能的にそれがよくないものだと感じた子供が後退るより先に、黒布が子供の足首を捉えた。


「痛っ……」


細い悲鳴があがり、芥川は己の異能が子供の足を強く掴んでいる事を理解した。理解し、焦燥が押し寄せぶわりと冷汗が滲んだ。

多分、子供が何も言わなければ足首を締め潰していた。

芥川が異能を解くと、子供は自分の足元を見つめ、確認するように爪先で軽く地面を叩いた。芥川はその傍に膝をつき、存外凪いだ顔の子供を見上げた。


「すまない。痛むか」

「もう平気だ」


沈黙。子供はしばらく芥川を見つめ、芥川の頭を両手で挟み込んだ。唐突な動作に驚き、されるがままの芥川の顔を覗き込んで子供は晴れやかに笑った。


「そうか。芥川さんも遊びたかったんだな!」

「……厭。僕は、」

「何がしたい?」


今の自分にはお前と共に居る資格がない。そう言おうとした芥川は、期待に輝く子供の瞳を見て言葉に詰まった。

笑えないことばかりだったよな→←諤昴>蜃コ縺励◆縺 零時半



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ロト - こめ(元団子)さん» お久しぶりです!最近わりと多忙でした…少し時間が空いてきたので見てみようと思えば結構更新されてて嬉しかったです!癒されました〜! (2019年8月25日 23時) (レス) id: 84710b8cd8 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - ロトさん» ロトさん! お久しぶりですね! そうです娘主は奔放な子供なので自由に遊び回っては国木田さんに叱られ 最終的には追いかけ回されますw (2019年8月25日 22時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
ロト - 近所迷惑(社員寮)……つまり、国木田さんの胃痛が増すんですね分かります。 (2019年8月25日 1時) (レス) id: 84710b8cd8 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - 来霧さん» やったー!ありがとうございます これからもお付き合いください! (2019年8月19日 2時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
来霧(プロフ) - 続きが!きになりすぎます!!応援していますー!頑張ってください! (2019年8月17日 0時) (レス) id: cc1c1fbc8a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:こめ | 作成日時:2019年6月22日 21時

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