国木田さんと買い物 ページ16
「現在の時刻は14時8分、此処からタオル類の売場までの移動時間は3分、14時15分には食器売場で、」
国木田は言葉を切り、ふらふらと何処ぞへ行こうとする子供の頭を掴んで自分の正面に引き寄せた。
「善いか。お前に求められるのは、必要な物を迅速に見極める判断力と、」
頭を固定されて尚、子供の瞳は通り過ぎる人々が皆一様にカートを押している様を眺め続けている。
「……何より迷子にならん事だ」
国木田は心持ち泣きそうな声で付け足した。子供はそれでやっと彼の方を見た。四秒ほど後に「わかった」と返事があり、国木田の胃は先行きへの不安でキリキリ痛んだ。
遡る事数十分前──。
『国木田、この子と一緒に買物に行ってやっておくれ』
『然し与謝野さん。俺の今日の予定では……』
『仕事なら多少は代わってあげるよ。さァ行った行った！』
日用品を購入する為、国木田は子供を連れてホームセンターに来ていた。快く同行してくれそうな敦と鏡花は丁度出払っており、代わりに駆り出されたのが国木田だったという訳である。
□□□
「簡素な衣類も必要だろう」
「今着てるもので間にあってる」
寝巻や部屋着は鏡花の古い襦袢や敦のTシャツを借りているらしい。子供は�犲�分のもの�瓩鯒磴�事を拒む傾向があった。
「必要ない」
「いや必要だから買いに来てるんだぞ」
「永くは居ない身だ」
国木田はこれには言葉を詰まらせた。探せど探せど子供の身元は判らず、孤児院に預ける事も視野に入れる段階となっていたからだ。
戦後の今、巷の孤児院は何処も国からの支援金からでは養い切れない程の孤児を抱えている。児童同士の平等性を保つ為、そこでは個人の物を持つことは許されず、服ですら支給されたものしか着用できない。
が、しかし。
「俺の手帳には�犧―茲�Aが自分の箸と茶碗を選ぶ�瓩箸△襦� 変更は許されん！」
国木田は食器の陳列された棚の前でそう叫んだ。子供はやや呆気に取られたように国木田を見上げている。通りすがりの女が幼い子の手を引き、国木田の方を一瞥もせず足早に去った。
「……じ、じゃあこれ……」
子供は国木田に気圧されたように手近な白茶碗を手に取った。中央に桃色の兎が洋絵の具で描かれている。国木田は満足そうに頷いた。
「箸はどれにするのだ」
「鏡花と敦のものとは違う色にする」
その後、子供はよく躾られた子犬のように国木田の側を離れなかったので、品物の選定は予定通りに終わった。
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ロト - こめ(元団子)さん» お久しぶりです！最近わりと多忙でした…少し時間が空いてきたので見てみようと思えば結構更新されてて嬉しかったです！癒されました〜！ (2019年8月25日 23時) (
レス) id: 84710b8cd8 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - ロトさん» ロトさん！ お久しぶりですね！ そうです娘主は奔放な子供なので自由に遊び回っては国木田さんに叱られ 最終的には追いかけ回されますw (2019年8月25日 22時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
ロト - 近所迷惑(社員寮)……つまり、国木田さんの胃痛が増すんですね分かります。 (2019年8月25日 1時) (レス) id: 84710b8cd8 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - 来霧さん» やったー！ありがとうございます これからもお付き合いください！ (2019年8月19日 2時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
来霧(プロフ) - 続きが！きになりすぎます！！応援していますー！頑張ってください！ (2019年8月17日 0時) (レス) id: cc1c1fbc8a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こめ | 作成日時：2019年6月22日 21時
