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舐って ページ8

芥川の体がぴくんと慄いた。


「……ッふ、ぁ」


え、声が漏れるほど痛い?

頭上から降ってくる荒い吐息に、慌てて口を離した。体を起こそうとしたところで芥川の腕と脚が絡み付く。そのままぎゅう、と抱き込まれ俺は再び身動きがとれなくなってしまった。同じ洗髪剤の匂いに包まれる。


「ええっと……」

「……」

「ごめんって」

「少し黙れ」


掌で後頭部を固定されてしまったので、首を反らして芥川の顔を窺うことも出来ない。雰囲気から察するに怒ってはいないようだ。

ともなれば、次第に俺が感じるのはただの退屈で、歯型の付いた彼の鎖骨を眺めているうち、悪戯してまた芥川を驚かせてやろうという気持ちが生まれた。ただし痛くないように。

目を閉じ、そろっと舌を這わせた。跡をなぞるように舐る。よほどこそばゆいのか、俺に密着した芥川の筋肉が耐えるように収縮しているのがわかった。拘束が緩んだ頃を見計らって抜け出す。

寝台に沈んだままの芥川は、どこかきょとんとした顔で「もう終わりか?」とこちらを見上げた。


「うん。芥川ったら全然笑わないんだもんなぁ」


芥川は片手で顔を覆った。次に聞こえてくるのは長い長いため息である。


「お前のあれは幼児の戯れに等しいと……そうか……」


身を起こし、胡座をかいた芥川は「来い」と自分の腿を叩いた。何だか疲れているようだしどうせならこのまま寝てもらおうと毛布をまず自分で羽織り、それをモモンガのように広げながら芥川に抱きついた。対面するように胡座の間に座った時点である事に気づき、はっと息を飲む。


「これ一番あったかい思いするの俺だね?  ちょっと体勢変えて……聞いてる? ねえあくたが、」


すいと寄せられた芥川の顔。わ、と続けようとした言葉は飲み込まれた。眼前には芥川の閉じられた瞼を縁どる長い睫毛。一度離されるも、息をつく間もなくまた唇を塞がれる。角度を変え何度も重ねられるそれに翻弄され呼吸のタイミングがわからず目を白黒させていると、ふと芥川が呟いた。


「かわいい」

「……ん?」

「かわいい、A、本当にかわいい」


やだ照れる……って返すべき?

けれど俺が何か言う前にまた口付けられた。主導権を握られ呼吸もままならないのは避けたいので、こうなったら俺も応戦することにした。

ぺろ、と芥川の唇を舐めると口が僅かに開く。舌を忍び込ませると嬉々として吸われた。子どもをあやすみたいに頭を撫でるのはやめてほしい。

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こめ(元団子)(プロフ) - ドロシーさん» 嬉しいです! ありがとうございます! (2019年10月16日 0時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
ドロシー(プロフ) - 好きです。(真顔)普通に自分の好きな小説のタイプにドストライクすぎて怖いくらい好きです。もうもっとヤってもらって大丈夫っす(鼻血)これからも応援してます!更新頑張ってください! (2019年8月9日 0時) (レス) id: 1a3258aeeb (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - 鯖野郎さん» ありがとうございます どんどんヤります (2019年5月25日 23時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - ろもざんさん» 文面にセンスがありすぎて笑ってしまいました。更新はややゆっくりですがこの先もよろしくお願いします! (2019年5月25日 23時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
鯖野郎 - いいぞ もっとヤれ(真顔) (2019年5月8日 21時) (レス) id: df533e69bf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:こめ | 作成日時:2019年1月14日 14時

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