最愛の本丸のはなし (ページ9)

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役員の苦労① ページ9

「あぁもう、ほんっと煩い！あのたぬきジジイ共！」
「先輩、お疲れ様でした…凄いですね。真っ向から反論できて…」

会議終了後の部屋にて、部屋の片付けをしつつ盛大に愚痴を零すのは、主に進行・解説役をしていた女性役員である。身長はやや低めだが、その分気が強く、言いたい事はハッキリ言う。
会議終了と同時に出ていった老齢の役員達は、まだまだ仕事があるから、と片付けの1つもしなかった。しかしながら、残って片付けをしている若い役員達が担当本丸をそれぞれ駆け回るのと違って、彼らはほぼ椅子に座っていればいいのだから、業務量には圧倒的な差がある。

「反論って言ってもね、事実しか言ってないし。言っても分からないんだからアイツらは」
「でも俺、怒鳴られちゃって謝るくらいしか出来ませんでした…本当、凄いですよ」

オドオドした様子で女性を宥めるのは、ヒョロりとした高身長の男性役員。彼女の2年後輩である。
粗方片付けたところで、もう一人の女性役員がトレーに紙コップを3つ乗せて運んできた。コップからは湯気がゆらゆらとたっている。

「2人共、狸のお世話お疲れ様でした。あまり声が大きいと聞こえちゃいますよ」
「……善処するわ」
「あ、ありがとうございます。いただきます…」
「はい、どうぞ」

入ってきた女性は、身長は平均並みで、落ち着いた雰囲気である。ただ、口を開けば毒を吐く、眼鏡をかけた役員である。

「さて、あの狸さん達はこちらに仕事を丸投げする気のようですね」
「ほんっとやってらんない…」
「また残業確定ですね…」

はぁ、誰からともなくため息が零れた。

「とりあえず、私としては件の本丸に担当役員を付けるところからだと思うのですが」
「…何回も面談してるアタシから言わせてもらうけど、あの刀剣男士達結構面倒くさいわよ。あきらかに何か隠してるし」
「だからこそ、適任がいるじゃないですか。彼なら上手く相手をし、且つ信頼を得るでしょう」
「まさかあの人ですかぁ？あの人はもう審神者でも役員でもない、それこそ男士達がいる預かり施設の職員じゃあないですかぁ」
「だからこそですよ」

女性役員はクイ、と眼鏡を上げる。

「現在私達よりも男士達との距離が近い彼に上司への取り次ぎなんかを丸投げしてしまえば、私達の仕事が減ります」
「…成程」
「か、考え方ですね…」

再びコップに口をつける。コーヒーは少し冷めてきていた。