役員の苦労�� ページ15
「単刀直入に、この本丸の刀剣男士達の穢れを祓い清めて頂きたいんです」
「いつもみたいに嫌がらせの仕事という訳ではなさそうですね…でも、まさか全振りを？無茶ですよ」
「いえ、えと…一部の、とりわけ穢れがひどい刀剣男士達のみ一時的に貴方の本丸で隔離して、浄化作業をして頂ければ…」
「ええ…」
寝起きであること、そして依頼内容からして、目の前の審神者は明らかに不機嫌になった。役員も詳しくは知らないが、この審神者は政府から何かと雑用で呼びつけられ、本丸を長く空けていることが多い。審神者としては本丸に常在していたいのが本音だろう。しかも穢れを纏った他所の刀剣男士を預かれと言っているのだ。
「……神事部は」
「手は尽くしているんです。でも、何故か払いきれなくて…貴方ならなんとかして下さるのではないかと」
「僕もありふれたごく普通の審神者なんですが」
「何をおっしゃいますか！そんなことないです！」
「でも、僕の本丸の事情はご存知ですよね？」
「うっ……」
しばしの無言。それを消したのは、紅茶とクッキーを用意し戻ってきた骨喰藤四郎であった。ソファの横にあるサイドテーブルに静かに置く。
「何の話をしていた？」と聞いた彼に、審神者は資料を手渡す。斜め読みをした骨喰は、依頼内容を大まかに把握したようで、役員を見据えて「やめた方が良くないか」と言った。
「そ、そんなぁ…」
「言ってやってくれ骨喰藤四郎」
「……そういえば、アンタの本丸に今見習いが研修に派遣されていなかったか」
「は？」
「え？そ、そんな話、僕聞いてないですけど…」
「小耳に挟んだだけだが、政府高官の娘が友人を巻き込んで、優良本丸の乗っ取りを企てているとかなんとか」
「…どういうことですか」
「ちょ、ちょっと待ってください」
役員は手元の端末を操作し、目の前の審神者の本丸へアクセスする。画面に表示された詳細を読み、顔を真っ青にした。言葉に出されるでもなく状況を理解した審神者は小さく舌打ちをし、ソファから立ち上がる。
「即刻帰ります」
「待て、仕事はまだ山積みだ」
「知らない。元々こんな雑用審神者の仕事じゃない。それに審神者不在時に見習い派遣なんてありえない。ウチは前々から見習いも定期監査も断っている」
「あ、の、じゃあこの仕事の免除、または軽減を上司に掛け合います…」
そう言った役員に、審神者と骨喰の視線が集まる。
「だから、引き受けてください。僕からの依頼」
「…仕方ないですね」
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作者名：劇団ドレミ座 | 作成日時：2018年10月28日 19時
