最愛の本丸のはなし (ページ11)

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ある日の出来事① ページ11

政府の刀剣男士専用保護施設。

審神者不在の本丸の刀剣男士や、諸事情につき本丸を離れ譲渡される刀剣男士、ブラック本丸から保護した刀剣男士など。訳ありの刀剣男士達を預かり、保護する施設である。
3年ほど前、時の政府の資金支援者の中でもかなりの有力者が、1人で資金をポンと出し、そして作られた施設である。本人曰く、可哀想な刀剣男士が沢山いると聞いたから、らしい。

さて、その施設の一室から、大きな物音と怒声が聞こえた。
職員が確認に向かうと、床に倒れ伏している一期一振、肩で息をする鶴丸国永と、一期一振を心配そうに囲んでいる粟田口の短刀・脇差達。
「う…」と呻きつつ立ち上がろうとする一期一振に、更に掴みかかろうとする鶴丸国永を、流石にまずいと職員は止めに入った。
しかし、刀剣男士と普通の人間。力の差は言うまでもなく、邪魔だとあっさり振りほどかれる。
そして一期一振の胸ぐらを乱暴に掴み更に怒鳴る。

「君、巫山戯るのも大概にしろよ。余所者の弟の為にあの子を犠牲にするってのかい！？」
「そのようには、申していません。ただ、あの子があのような争いを、本当に望むのかと言っているのです」
「知ったことか。守れなければ意味がない！」
「あの子はきっと悲しみます！それに、いずれこうなる事は分かっていたではないですか！」
「こうならないように皆必死に助けようとしたんじゃないか！」

言い合いが更に加速し、遂に一期一振も鶴丸国永の胸ぐらを掴み、いつ殴り合いになってもおかしくない雰囲気になった。睨み合う2人に、力のある者を呼ぼうと職員は部屋を出ていこうとしたが、それは突然入ってきた古備前派の2振りに制止される。

「騒がしいなと思ったら、随分楽しそうなことをしているな」
「鶯丸…楽しそうに見えるかい？」
「鶴丸殿がつっかかってきただけです」
「君なぁ！」
「うるさいぞ。耳が痛くて仕方ない」

やれやれ、と肩をすくめる鶯丸と、後ろでただ静観している大包平、未だ掴みあっている一期一振、鶴丸国永に、緊張した面持ちで事を見守る粟田口の短刀・脇差達。
いつの間にやら鳴狐も来ており、大包平が軽く事情を説明していた。

正直、この気まずすぎる部屋から出たい。
職員は切にそう願った。