乱戦後 ページ8
＊
飾りのようなお粗末な消化器官しか持たないAは物を食べない。
「これ美味しいよ」とトガから箸で摘んだ刺身を差し出されたAはこくりと頷いた。
食べるのか？反応を得られたことに、キラキラと眼帯のない目を輝かせるトガと、そんな紅一点を無表情で見つめるAに男達は注目する。
数秒後。一向に口を開かないAに持ち上げた腕が疲れたトガはむうと膨れて自分で食べた。
何となくがっかりした雰囲気が流れたが、荼毘はそうなるだろうと予想がついていた。
生きている人間は生理的欲求から食を求めるが、死んだ人間はその内ではない。脳無の仕組みを詳しくは知らないが、Aの動力源は栄養ではなかった。
そのためAに食べることは必要ない。というか物を摂取する行為を知らない可能性さえある(そして荼毘はAに教育を施さない)。
「やっぱり食べないんだ？」
こっそりと寄って来たのは、いつもの仮面を外した目出し帽姿のミスターだ。寿司が振る舞われる現状の原因とも言える人物である。
ちなみに先の戦いでは何もしていない。Aを託したはずが、そのAに抱えられて移動している様子を連合の面々は目撃している。
「そうみてェだな」
「"みたい"っておまえね…」
「俺はアイツの保護者じゃねェんだよ」
そう告げた荼毘の横顔がどこか穏やかに見えて、ミスターは「似たようなモンでしょうよ」と言いかけた言葉を飲み込んだ。
代わりに、聞き分けの悪い子供のフリをしてミスターは問いかける。
「じゃあ何なのさ」
荼毘と目のあったAがトガから離れてこちらにやって来た。荼毘は拒むことなく己の隣を叩き、Aは素直に座り込む。
その様子に懐かれているとは思わなかった。ただ、躾がなっているなあと思った。仲間の癖(へき)に口出しはしない主義だけど。
ミスターは知らなかったが、一連のAの行動はすべて自発的に行われたものだった。
「友達だ」
呟くように答えた荼毘にこくりとAが頷く。それから、この場に合わない子供は拳を作って荼毘に差し出した。これも何かの芸だろうかとミスターはじゃっかん呆れる。
ところが、荼毘は翡翠の瞳を見開いてピシリと固まってしまった。
困ったように＿＿いつの間にか察せるようになってしまった＿＿荼毘を見つめるAが可哀想に思えて、ミスターは「荼毘？」と声をかける。
ああうん、とやけに幼く我に返って、荼毘はフィストバンプをするために拳を返した。
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緑猫(プロフ) - 廃部させ隊さん» こちらこそ、最後まで読んでいただきありがとうございます！楽しんでいただけたようで何よりです;; (2021年12月16日 21時) (
レス) id: dd1c3e784a (このIDを非表示/違反報告)
廃部させ隊 - ﾊｯﾊｯﾊｯ(過呼吸)好きｯｯ作者さんありがとうｯｯ (2021年12月16日 20時) (レス) @page17 id: 4296e190f8 (このIDを非表示/違反報告)
緑猫(プロフ) - み゜さん» コメント＆最後まで読んでいただき、ありがとうございます！最後は想像にお任せします…笑 ハッピーエンドになっていれば良いですね＾＾ (2021年11月29日 19時) (レス) id: dd1c3e784a (このIDを非表示/違反報告)
み゜ - お、お、終わったぁぁぁ！！！？！凄く考えさせられる終わり方好きです。夢主くんはどうなってしまったのかぁ！気になる……完結お疲れ様でした。 (2021年11月28日 22時) (レス) @page17 id: b6bcf1174f (このIDを非表示/違反報告)
緑猫(プロフ) - 朝陽さん» 前作に引き続き、コメントありがとうございます！共依存ものが好きなのだなあと思う今日この頃です。今作は荼毘の一方通行ですが笑 ゆっくり書いていきますので、お待ちいただければと思います！ (2021年11月15日 23時) (レス) id: dd1c3e784a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：緑猫 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?
作成日時：2021年11月13日 11時
