5話 ページ5
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日は経ち、現在。
実に団子が美味しそうである。
鼻にはいる甘い香りに反して空気はピリついていた。
鶴見中尉と対座して団子を食べている……この顔に傷を持つ男が尾形上等兵をやった犯人だというのだ。そば屋で兵士数人を相手に大暴れだったとか。
(団子の買い出し担当で助かった……)
Aはあまり接近戦に向かないのもあって、もしその場に居たら……とぞっとしていた。
(しかし、だ……この傷の顔には見覚えがある)
「尾形上等兵をやったのはお前だな?“不死身の杉元”」
(そうか……旅順でのあの人か)
この傷の男は「人違いだ」と否定するが、鬼神の如く戦っていた彼の姿は目に焼き付いている。ちらりとみえた顔の傷が印象的でもあったからだ。そして鶴見中尉も同じく旅順で見かけ、そば屋での大立ち回りをみてピンと来たのだと言う。
「俺は第二師団だ、旅順には行ってない。やはり人違いみたいだな」
「なぜ尾形上等兵は不死身の杉元に接触したのか……それはお前が金塊のありかを示した入れ墨の暗号を持っていたからだ」
団子を頬張りながら鶴見が続けて話す。
「……とここまで話がつながることを恐れて我々から逃げようとした」
そして鶴見は声を落とし“刺青人皮の在処”を問うた。
「金塊?刺青?何を言ってるのかさっぱりだ。お前らの大将はアタマ大丈夫なのか?」
「脳が少し砲弾で吹き飛んでおる」
タチの悪い冗談に杉元が笑いだす。
(きびしいな……)
とAが思った時には一本の串が杉元の頬を貫いていた。
「たいした男だ。まばたきひとつしておらん──やはりお前は不死身の杉元だ……。だがな、不死身で寿命のロウソクが消せぬというのなら俺がそのロウソクを頭からボリボリ齧って消してやる」
と鶴見中尉は微動だにしない杉元に向け言い放つ。
(まったくおっかないね……)
Aが目の前のやり取りにゾワついていると鶴見中尉は杉元を抱き込むため交渉をはじめた。
杉元が生き延びるには、金塊を軍資金として北海道を手に入れるために鶴見中尉の兵士となり共に戦ってもらいたい事を話す。
「付き合ってられん」
「ロウソクぼりぼりしちゃおうか」
──決裂だ。
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ra(プロフ) - プスメラウィッチさん» しがない字書きにコメントありがとうございます🙇とても元気をもらえました。実はこのサイトで文章トレスされてしまっていたようで、もうここには投稿しない方針で考えています。pixi⚫︎の方などに投稿するか検討しているのでその際はお知らせいたします (1月31日 22時) (レス) id: e3ec8bd41f (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ(プロフ) - 続きの更新頑張って下さいね😆応援しています。 (1月31日 15時) (レス) @page26 id: b10205217f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ra | 作成日時:2021年5月13日 1時