【テニプリ】こっち向いてほい Ⅱ (ページ9)

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謙也side ページ9

「うっわ、埃っぽいなぁココ」

あいりに案内された空き教室。

そこは余った机やら椅子やらを収納してあった。

何年も使われた様子はなく、カーテンは閉め切っていて、机の上には埃も被っていた。

「もうすぐで昼休み終わってまうで？俺、先生に呼ばれてるんとちゃうん？」

「あぁ、あれ嘘や。堪忍なぁ…」

「な…嘘やったん！」

なんでまたそんな嘘を…と言おうとしたが、あいりの顔が今にも泣きだしそうで俺は言葉を失った。

「……あたし、嫉妬しっちゃったんや。あの子に…」

「し、嫉妬？…あの子って誰や？」

「Aちゃん…。謙也とめっちゃ仲良さそうだったから、つい話しかけてもうた…。」

…嫉妬……

俺、めっちゃ愛されてるやん。

なのに俺、あいりの事愛しいなんて思った事ないって…。

俺があいりの事めっちゃ不安にさせてもうた…。

「す、すまん！」

あいりはかわええ。

…分かっとるけど、今の泣きそうなあいりも…全部かわええ。

初めてや。俺、こんなにあいりの事かわええって思うの。

そんな風に思っていたら、身体がふいに動いた。

俺はあいりに抱きしめられていた。

「謝らんでええ！あたしがワガママで…Aちゃんと謙也が楽しそうにしてるのが羨ましくて…」

俺の身体にしがみつくあいり。

俺、彼女をこんなに不安にさせてたんや。

悪い事してしもうた。

「すまんなぁ…。」

ぎゅうっとあいりを抱き返す。

あいりからはバニラの匂いがして、甘くて、女の子ってかわええなぁて思った。

「謝らんでええって言うたのに…！」

「謝らんと気が済まんくて」

「ははっやっぱり謙也って面白い」

幸せや。

これが彼氏彼女なんやなぁ。

「なぁ謙也。一つお願い聞いてくれへん？」

「ん？」

「あんな、Aちゃんともう話さないで欲しいんや」

突然話された要求に驚き、俺はあいりを抱きしめていた手が力を失うのが分かった。

「Aと？な、なんでや？」

「あたし、謙也のことほんまに好きやねん。…せやけど、Aちゃんと謙也ってめっちゃ仲ええやろ？

それに、Aちゃんってめっちゃかわええし、謙也取られてしまうんやないかって心配なんや」

あいりをもう不安にしない。

そう思っていた矢先にこれ。

「と、取られるて…。Aには白石が…。」

「白石くんの片想いやろ？」

「せ、せやけど…。」

「あたし、不安や…。お願い、謙也…。」

「…」

俺、どうすればええんや？