【テニプリ】こっち向いてほい Ⅱ (ページ8)

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あいりside ページ8

昼休みに偶然通りかかった忍足のクラスの前。

そこであたしは見た。

忍足とAっちゅー女が教室の前で笑いあっとるのを。

「…謙也？」

思わず声が出た。

ハッとして口を押える。

何名前で呼んでるんや…！

学校じゃ名前で呼ぶのアカンって決めてたのに…。

あたしが男を下の名前で呼ぶ事がどれだけレアやと思ってるん！

あたしが男の名前呼ぶだけで噂になったりするんやで？！

…なんや、そのガッカリしたような顔。

仮にもアタシは彼女やで？

「……忍足くん。先生が呼んどったで、ちょっと来てくれへん？」

精いっぱい作った笑顔で謙也を呼ぶと、謙也の顔が少し歪んだのをあたしは見落とさなかった。

「A、また部活でな」

なんや、その顔。

別れが惜しいん？たかが幼馴染と…？放課後に部活で会うやん。

イライラが止まらん。

「先生の呼び出しって、俺なんかやってもうたんかなー」

「あははっどーなんやろ？」

そんなん嘘や。

単に忍足とあの女が一緒にいるのが嫌やった。

せやから離したんや。

「あ、あいりちゃん！」

「今日もほんまかわええ～」

そうや。男はみんなあたしのことチヤホヤしてればええ。

あたしの事を一番に考えてればええんや。

それなのに。

「さっきな、Aのやつジャージ忘れたって言うて、白石に借りに来たんやって。

　普通違うクラス行かへん？びっくりしてしもうたわ～」

……あの女の話題？

なんで。目の前にあたしがいるのに他の女の事話さんとあかんの。

「さぁ？お友達がおらへんって事やない？」

全て言い終わってからハッとなる。

アカン。イライラしてつい本音を言うてもうた。

隣にいた忍足の顔をおそるおそる見ると、やはりと言うべきか驚いた表情を浮かべていた。

「ま、まぁあいつ人見知りやし！」

「そ、そうなんや～かわええのにもったいないなぁ」

……よそよそしい変な空気になってしもうた。

なんとかして空気をかえんと…

「ちょおこっち来てくれへん？」

そう言って忍足へ手招きする。

案内したのは近くの空き教室。

忍足謙也。

…あんたもあたしだけ見てればええんや。