尾行するな！ ページ7
メア皇子の部屋から戻る途中、またリュゼ皇子からの視線を感じた。何がしたいんだろう。全くあの兄弟は…自分が気づかれてないと思い込みすぎだな。メア皇子のはともかくリュゼ皇子なんて、なんか後光っぽいの出てるからすぐ分かるのに。
部屋に戻るまでずっと尾行され続けるのは嫌だ…。
いっそ話しかけてみようかな…。
『リュゼ皇子、そこに居ますよね？』
「はっ！気づかれてる！？」
やっぱり気づいてないと思ってた！気付かないわけ無いのに…。
『何か気になる事があるのなら…』
リュゼ皇子が顔を桃色に染めた。
「いっいえ、そうじゃないんです……」
『では、どうして私を付けているんですか？』
「えっと……」
まだここへ来てから3日も経っていないけど、リュゼ皇子がこんなにどもっているのは初めて見た。もはや皇子は耳まで赤くなっていた。
「あ…あぁ……」
皇子は声を漏らすと、前によろけ、そのまま倒れて気を失ってしまった。
『えっ！？どうしたんですか！誰かー！！』
慌てて助けを呼ぶ。
丁度近くにいたクロムが駆け付けた。経緯を全て伝えた。
クロムは顔色も変えずに落ち着いてリュゼ皇子を姫抱きし、皇子の部屋へと連れて行った。私も同行した。余程私が焦っていたのか、クロムに「心配しなくていい」と落ち着かされた。
クロム「…ただの睡眠不足のようですね」
『そうですか…良かった…』
私のせいで倒れた！なんていう噂がもし立ったらイナコは終わりだもんね。
私は皇子のためのタオルと寝巻きを用意した。
クロム「後は私が対処するので、Aは戻っていて大丈夫ですよ」
言われた通りに、私はそそくさと部屋を出た。
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リュゼ「…ん……」
クロム「おはようございます。調子はどうですか？」
「大丈夫です…けど……私は、どうして寝ていたのでしょう……」
「姫を尾行している所を姫本人に見つかり、その後顔が赤くなってそのまま倒れた…としか聞いておりません」
「ああ…あぁ、そうでした」
「どうして尾行をしていたのですか？」
皇子がまた顔を赤らめる。ヒロインの座を奪ってしまうのではないかと思う程に美しく恥じらうので、クロムはしかめっ面をした。
「婚約候補という話を姫にしてから、何だか胸が苦しくて…」
クロムは何かを察したが、それをリュゼに教える事はしなかった。自分の計画の邪魔になると考えたのだ。
あのリュゼ皇子が、姫の事を意識し始めてしまった！
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作者名：べっこう飴 | 作成日時：2019年1月26日 0時
