壮大にするな！ ページ27
〈私、どうなっちゃうの？〉
殴り書きみたいになってしまった文字を王子に見せた。私が余程焦った様子だったのか、王子は目を細くした。
キュアランが喋り始めた。
｢まあ……ええと、そ、そう、こういう時は最悪の場合とかは考えちゃ駄目よ！｣
ハキハキ喋るキャラクターのキュアランなのに、口がどもっていた。やっぱり、絶対に私には悪いことが起きるのかな……そう、例えば、イナコが滅びたり………。…それは、それだけは嫌だ。
……あ…なんか、泣きそう…。
｢ああ、もう、ほら！悲しい顔なんてしててもどうにもならないんだから！大丈夫よ、誰にも被害は無いわ｣
『？』
想定外のことを言われ、私はメア王子の顔を見た。
…………。なんとも言えない微妙な顔だ。うーん、きっと、この顔は｢自信ありげな顔｣なんだろうな。多分だけど。
この人、普段人と合うことが少なくてあまり喋らないから、心情と表情が一致しない時があるんだよね…。
…まあ、とにかく何か案があるみたいだ。とりあえず聞いてみよう。
私はメア王子をキッと見つめた。後ずさるように王子は顎を引いた。椅子に座っているから実際には後ずさってはいない。
｢……いや、そ、そんな壮大な計画じゃないんだけど…｣
さっきはキュアランだったが、今度はメア王子が喋った。まあ、そんなことどうでもいい。
良かった…難しい作戦ではなさそう。そこまで馬鹿なわけではないけど、頭がこんがらがるような作戦は苦手なんだよね。
「ただ、アンタと俺が、ここを通っていたことを隠せば良いだけ」
ああ、なんだ、すごく簡単だ。このくらいなら朝飯前にでも出来そう。
〈それだけで良いの？〉
「ああ。それだけ…。でも注意しろよ。多分経緯を聞きにくるのはクロムだから」
ひいっ！あ、あ、あのクロムが！？
〈じゃあ無理かも…〉
「いや、ちゃんと嘘を突き通せるような計画を立てれば大丈夫だと思う。少し勘付いてはいるだろうけど、そもそもクロムはこの通路の事は微塵も知らないんだし」
ううう…でも怖いなぁ…。あの人の部下への態度を見た感じ、嘘はすぐバレちゃう気がする…。
「………おい、あんた…顔が青くなってきたぞ。………そうだった。医者を呼ばないと。ちょっと待ってろ」
顔が青くなったのは、きっとこの先の心配のせいなんだけど……。
……あっ、待って待って！！
『待っれ！』
ドアノブを回そうとしていた王子の背中を叩いて止めた。
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作者名：べっこう飴 | 作成日時：2019年1月26日 0時
