盗み聞きするな！ ページ22
少し経って、肌寒くなってきた私が目を覚ました時には、もうテオは起きていて、部屋には誰も居なかった。
机の上に何かある。置手紙だ。
この拙い筆跡…テオかな。
メア王子の従者さんから伝言。王子が話したいことがあるらしいから、起き次第王子の部屋に行ってくれ。俺はグリまるとキャラバンを見に行ってくる。他の人にもだが、くれぐれもメア王子には気をつけるように。クロムさんにもな。何も用事がない時は部屋を出るな。
…‥相変わらずの過保護…。
うん、でも、あの2人には注意しなきゃ。何するか分かんないんだもん。
『あ〜〜、結婚するならリュゼ王子かなぁ〜』
吐き出すようにそういうと、部屋中にその声が響いた。
すると、どこか、ドアじゃないどこかから、驚きを隠したような「っ！」という声が耳に入ってきた。
イナコは夜になるとすぐ山から動物が畑を荒らしに来るからちょっと足音がしただけでも気付いちゃうんだ。
そう。だから、いくら声を殺しても、その声の主くらい……。
『メア王子！』
「ひっ」
部屋の隅の方の壁がガコッと外れ、そこから現れた穴からメア王子が這って出てきた。メア王子は立ち上がるなり、さも当然のように質問を投げかけてくる。
「な、なあ…あんた、兄上とけっ、結婚すんの…？」
こ、こいつ！私の独り言、聞いてたんだ…！
『どうやって聞いて…』
「さっさと答えてよ」
なんで来たの、とかさっきまでの話聞いてたの、とか、絶対に私の方が聞きたいことは多いはずなのに、王子はそれを聞かせてはくれない。
…うん、しょうがない。王子はこういう人なんだよな…。
『えっと、それもありかな〜って思っただけだよ』
「…ふーーん。絶対無理だね。神の子の妻なんて、気が狂ってなきゃできない」
『そんな真面目な話じゃなくて、今の所いちばん仲も良くて心地良いから呟いただけ！ていうか、女の子の部屋に入らないでよ』
ニヤニヤ引き笑いをしていた王子の口がいつものへの字に戻った。
「あんたが来ないから悪いんだろ」
私は思わず、はぁ？と声をあげた。
たしかに従者さんから言伝は預かってたみたいだけど、私が了承したなんて一言も言ってないじゃない！
『………王子』
「なっ！そ、そんな顔するなよ！あんた、何で怒ってんの？」
『分からないなら、出てってください！』
「は、はぁ？ちょっとやめろ！押すな押すなっ！」
王子が何か言っていたけど、それを完全無視して私は王子を部屋から追い出した。もう、あんな人知らない！
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作者名：べっこう飴 | 作成日時：2019年1月26日 0時
