【ダメプリ】攻防戦 (ページ16)

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皇子の存在を忘れるな！ページ16

本当に、本当に申し訳ない気持ちも込み上げてきたが……それよりも、何か違う感情がずっと渦巻いている。

『何か償いをさせてください』
｢そんな…良いってば！｣
『いけません』

Aは俯いた。何か言いたげだ。あとひと押し。

『何でも良いですから』

やっと言う気になってくれたようだ。

｢ええと…じゃあ……今のこと全部忘れたいです。……あの、だから、…｣

何故か敬語だ。そして赤面。

………。

これは、そういうことでいいのだろうか。

分からないまま、私はAに口づけした。あの男がどんなキスをしたかは知らないが、絶対にそれよりも濃いものを。舌を絡ませ、唾液はもうどちらのものかも分からない程に。

Aはまた息を止めている。苦しそうな顔も唆られる。度々漏れでる声は甘かった。

「………」

ゆっくりと、口を離した。Aは息を荒くして震えている。
少々がっつきすぎたかもしれない。
いや、それよりも、やはり怖かったのか。

それに気付かない振りをして、淡白に話し始める。

『もう大丈夫ですね。では、皇子の所へ戻りましょう』
｢…た、立てません｣
『はぁ』

へにゃりと笑うAに、私はわざとらしくため息を吐いた。

『私にどうしろと言うのですか。姫抱きするのはご遠慮願いますが』

小っ恥ずかしいので、ね。
Aがどうしてもやって欲しいと言うのならやるけれど、という気持ちは心の中に仕舞っておこう。

「そんなこと言ってないでしょ！？もう、クロム！……あ、なんか元気になったかもしれない…」
『おや、それは良かったです。私のおかげですね』

本当に元気になっただろうか…？とても心配だ。すごく心配だ。

…兎も角、Aが動けるのならば、皇子の元に行く事が最優先。

私が差し出した腕を掴んで立ち上がったAは、本当にいつも通りのように見えた。