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クロムside
彼女が部屋を出てから少し経った。私は、椅子に腰掛けたまま、動けずにいる。口が乾いてきたが、動くタイミングというのが分からなくなってきて、ティーカップを手に取ることも出来ない。ただ、頭だけを回転させている状態だ。
どうして私はあんな事を……。
と、そればかり考えている。
が、何度考えても答えは出てこない。おかしい。女性に対して、あんなに必死になるなんて。この私が…女性に興味なんて、微塵も無いはずの私が。
悩んでいると、誰かが扉を叩いた。やけに軽やかな靴の音もする。
リュゼ「宰相。部屋に入っても良いですか」
ああ、皇子か…。
『どうしましたか』
何か重大な話だったらいけないから、茶を飲みながら、落ち着きながら聞こう。といっても、姫以外の話題ならばどうにか今の焦りくらいは隠せるけれど。
「えっと…姫との友好を深めたいと思っているのですが…」
姫！！？
『ぶっ』
「宰相！？どうしましたか！？」
『いえ…何でもないです。ええと、何でしたっけ？』
「…姫との交流を深める為に、街まで降りて、何処かに行きたいと思っているのですが…宰相も来てくれませんか」
街まで降りて、何処かに…って、それは所謂デート、ということか？やはり皇子も姫に気があるのか？…いや、私の気持ちに気付いていて、私の後押しを…！？
ああいけない。落ち着け。今はそんな事はどうでもいいんだ。
ううん…。私が居るとしても、皇子と姫が街に出るのは少し不安ですね…。
『3人で行く予定ですか？もう少し多い方が良いと思いますよ』
「ああ、たしかに…友達は大勢の方がわくわくしますね！」
そういう事じゃ無いんですが…まあいいでしょう。騎士や従者ではなくとも、人数は多い方が安全ですね。
誘うべきは友達では無いとは思いますがね…。
私も友達なんでしょうか…。
「では、メアと、イナコの騎士様も誘ってみます」
皇子はそう言うと軽やかに部屋から出ていった。
…男4人の中に、姫を1人放り込むのは少し心配……いや、あの人達なら大丈夫であろう。それに、いざとなれば私がどうにかすれば良いのだ。
姫は私が守れば、それで良い。
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作者名：べっこう飴 | 作成日時：2019年1月26日 0時
