銀河大戦争 第1章開戦

人事 ページ21

「ところで張君、君は敵軍に捕虜を取られたり自分の正規の情報を一つでも見られたりしたかね？」

「大丈夫です」

「それは良かった。では攻略艦隊に君の第25艦隊も追加しよう。これで攻略艦隊は全4個艦隊に加え陸軍揚陸隊300隻つまり陸軍120万人だ。他の艦隊司令官は第37艦隊の呉章鸞中将、第19艦隊の馬鎮武中将、第20艦隊の史威仁中将だ。陸軍司令官は劉無皓大将だ。失礼の無いようにな」

張は出来るだけ静かに聞いていたが呉や馬という名前が出たところでつい不満気な表情をしてしまった。副総統にはあっさりバレて案の定こう言われた。

「どうした不服か？」

「はい、不服です。呉提督は素行に難があり馬提督は立案に難があります」

張の言い分を副総統は吹き出しそうになりながら聞いた。それもそうだ。突撃しかしない彼が立案を語るのは殺人鬼が窃盗犯を糾弾するのも同じであるし素行が悪いというのも張が言うとやはり冗談に聞こえてしまう。だがこんなことを彼に言えばこの関係にヒビが入るかも知れないし張が気を悪くすると思ったからだ。まだ副総統は彼を気の置けない人間とまでは思っていなかった。

「だが他に人材をまわすと北部戦線の凌元帥が困るだろう。ここは我慢してくれ。ほかに何かないか？なければ艦隊の準備はしてあるから急ぎ出港してくれ。君の……おっと君達の赫赫たる戦果を期待する」

張は副総統に一礼をして退出すると港に赴き本来の自らの乗艦、高速戦艦江寧に乗り込んだ。海軍艦艇1700隻と陸軍揚陸艦300隻は旧式である原子力艦中心だが堂々と港を立った。

すでに魯国は本格的侵攻を始めたにも関わらずアッバス星団は未だ予算会議すら終わっていなかった。それもそのはず、海軍に猛反発した陸軍を今度は空軍が反論し、議事録が真っ黒になるほど泥沼の言い争いになっているからだ。航宙要員としてもっとも活躍する海軍と違い活躍が限られる彼らは予算を取ることに必死であったのだ。争いは同じレベルのもの同士でしか起こらないとはこのことだろう。誰もがそう思うほどであった。

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