銀河大戦争 第1章開戦

達成 ページ37

「よし！ やったぞ」

些か大袈裟に倒れた統合参謀長を見て大将は腕を築き上げて喜んだ。本当に殺したことに政治家たちはどれほど恐れたのか。兵士達がどれほど達成感を覚えたのか。それがはっきりと分かった。

「誰か、それを外に捨ててこい。奴に葬式は高級すぎる」

何人かの兵たちが体格に似合わないほど重い統合参謀長を運び、窓から放り捨てると、大将は一歩一歩を踏みしめながら統合参謀長の席まで向かった。

「空軍、海軍の最高司令官は未定だったな。では規定に基づいて私が臨時に統合参謀長に就任する」

何も間違ってはいない。だが、中にはこれこそが愛国を盾にした偽善だと思うものもいた。それも仕方ない。事実、グーチィ大将が軍の実質的な最高位である統合参謀長についたのだから。無論、彼自身は本当に義憤に感じての行動だったし、権力の強奪だとか独占だとかは一切考えていなかった。だが、周囲の捉え方と本人の意思はなかなか一致しない。本人の意思まできっちりと考察してくれるほど優しい観客は多くはないのだ。

「これより人事を発表する。なお緊急時の規定に基づいて私が全て決める。海軍司令長官にヴァンサン大将、空軍最高司令官にミュレー大将、陸軍教育総監に……」

最初の方の人事発表だけで政治家たちはこの男は無知で無能だと感じた。それもそのはず、散々マスコミと世間にヘイトを食らった人間ばかりを採用しているからだ。有能な人間であったとしても世間が納得するようにしないといけない。軍の支持は暴落するだろうとも彼らは思った。


外は穏やかな雪が突如激しくなり、打ち捨てられた元統合参謀長フォンテーヌの体も徐々に雪に埋もれていった。

「おっ、あれは……あっ！統合参謀長閣下だ！早速大佐に報告せねば……」

この寒さの中、汗をかいて血眼になって何かを探しているようであったメルシエ少尉は周囲を散策している部下を集めて、数人に見張りを任せると鼻歌を歌いながら『大佐』の元へと向かった。この様子は会議室からも見えたが、誰も話題にしなかった。だがこれは仕方ない、いちいちこんなことに神経は割けないだろう。こんな下級士官の行動が大問題を引き起こすなんて試しで少しだけ買った宝クジで一等を当てるぐらいありえないことだ。皆、そう思っていた。

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